リアルレーシングゲームは『eスポーツの新境地』を開拓できる可能性がある

近年のゲーム業界のトレンドの一つが「eスポーツ」で成長著しいが、レーシングゲームがそんなeスポーツの新境地を開拓できるかもしれない。本稿で詳しく紹介する。

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グランツーリスモをプレイするマックス・フェルスタッペン (プロレーシングドライバー)


eスポーツは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、JeSPAによると以下のように定義されている。

「eスポーツ(e-sports)」とは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称。


最近では、ネット番組だけでなく、日本のテレビ局がeスポーツ関連番組を制作し放送するなど、国内での注目もかなり高まっている。

▼フジテレビのeスポーツ番組

しかし、実際にはeスポーツが世間一般でメジャーな地位を獲得しているのは、2000年代前半にプロリーグが大ブームとなった韓国くらいで、海外においても「大いに盛り上がっているけどゲーマー達の中での盛り上がり」に留まっている。

非ゲーマー層との間にある壁

ゲームが好きな人やそのゲームを普段遊んでいる人、eスポーツを見るのが好きな人は観戦するだろうが、その外側にいる人達に訴えかけるには大きな壁が存在する。

というのも、eスポーツは試合の中で起こっている事の「凄さ」が一般の人に伝わりにくいという特性があるからだ。

特にMOBAやRTSは試合の中で何が起こっているのかはそのゲームを知らないとわかりづらく、比較的わかりやすい方の格闘ゲームですら優劣と勝ち負け以外の駆け引きは一般の人にとって曖昧なものだと言えるだろう。

しかし、ゲームの特性上それは”仕方のないこと”だと割り切る必要があるし、シナジー効果でそのゲームの人気やプレイヤー人口を高めることで視聴者も増やすのがベストだろう。

筆者がその壁を強く感じたのが以前に地上波で放送されていたバラエティ番組で、プロゲーマーやeスポーツの事が紹介されていたが、番組の出演者達は賞金や観客数、プロゲーマーの生活や収入には興味を持っていたが、最終的には世間一般からは外れた取るに足らない「奇異なもの」としてしか扱われていない印象だった。

このように、世間一般の「非ゲーマー」の人たちや特に関心がない人達との間には大きな溝あるいは壁があるというのが現実だ。

別の大きな理由には、「ゲームは息抜きの娯楽だから競技として本気で争うのは馬鹿げている」という固定観念が染み付いているというのもある。しかし、娯楽である将棋やチェスではそのプロ棋士達の地位は確固たるものとして世間で認められているのだ。

eスポーツでこれを覆すには多くの人に競技ゲームに触れてもらうか、言い方は悪いが印象を操作するしかないのではないだろうか。

垣根を壊す役割を担えるレーシングゲーム

興味関心がある層とそうではない層の間にある垣根を打ち崩す事ができるかもしれないのが「リアル志向のレーシングゲーム」だ。

ドライビングシミュレーターとも言われるレーシングゲームはそのリアルでシビアなハンドリングや挙動から遊ぶ人が限られるジャンルであり、ゲーム業界の中では少し異質な存在だが、それゆえに普段ゲームをやらない人がステアリングコントローラーごと買ったりする。

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レースゲームは展開が非常にわかりやすい

現実のスポーツであれeスポーツであれ、「何をやっているのかわからない」「ルールがわからない」と観戦は面白くないのが普通の感覚だろう。

しかし、レースゲームには「先にゴールした方が勝ち」という至極簡単に理解できるルールがあり、誰が見ても何が起こっているのかがわかりやすい。

そして、車を運転するというのは世間一般の日常生活からかけ離れておらず、リアルなレーシングゲームであれば、ゲームに登場する車と同じものが現実に世界にも存在しているなど、現実とバーチャルが密接に関係している事が挙げられる。

ゲームの事をよく知らない一般の人でも観戦した際に楽しさや凄さが非常に「わかりやすい」ジャンル、それがレーシングゲームだ。

プロレーサーとレーシングゲーム

プロのレーシングドライバーは実際にサーキットで走行する前に、シミュレーターで練習を行うのが近年の常識となっているが、リアルなレーシングゲームはほとんどシミュレーターそのものであったりする。

実際にイギリスのマクラーレンは、レースゲームで速いゲーマーをシミュレーターを使った開発に参加してもらうようなプログラムを始めたし、日産自動車はグランツーリスモを使ったアカデミーで勝ち抜いた人を本物のレーシングドライバーとして起用して訓練をし、現実のレースで実績を残している。

プロのレーシングドライバーがリアルなレーシングゲームを専用のコントローラーでプレイしても大きな違和感なく走ることができるため、レースゲームが上手い人VSプロレーサーという試合も実現できるのだ。(東京ゲームショウで実現している

レースゲームのファンも、本物のレースのファンも、さらには単なる自動車好きも、観戦を楽しめるというかなり貴重なジャンルだ。

F1世界王者のルイス・ハミルトンがグランツーリスモでのタイムアタックに挑戦している動画が公開されたが、彼自身の普段のドライビングスタイルをゲームの中でも試していたようで、まさにゲームと現実の垣根を超えるという事が実現されている。

「スピンしたことがないのは、まだ限界まで引き出せていないという事ですよ」とハミルトンは動画の中で語っており、これはそのままゲームのプレイヤー達にも届くような言葉だ。

そして面白いことに、レーシングゲームの実況・解説は、普段実際のレースを実況しているアナウンサーでも完全に違和感なく対応することができる。(プロの実況によるグランツーリスモのエキシビション)

ある意味ではリアルなレースゲームはeスポーツと現実のスポーツの中間に位置する競技だと言うこともできる。ゲーム自体が現実に近い所に位置しているがためにゲームを使った競技自体も現実的なものになる。

普段eスポーツはおろかゲームにすら全く興味がない人たちの目を引くと同時に楽しませる事ができる存在だ。

これまでのeスポーツのジャンルとは異なる領域を開拓できる可能性がある。

自動車メーカーも黙って見ているわけにはいかない?

現実との境界線近くに位置するリアルなレーシングゲーム、ドライビングシミュレーターはeスポーツの新境地を拓く事ができる可能性を大いに秘めている。

そして、「自動車メーカー」というスポンサーとして途轍もなく強力な存在が控えているということも忘れてはならない。自動車メーカーのレーシングチームに所属するプロゲーマーというのは非常に夢のある話だが、グランツーリスモ等はFIA(国際自動車連盟)が公認しているのであながち夢物語ではないかもしれない。

依然として最重要なのは既存のファン達


eスポーツには既に形成された大きなコミュニティが存在しているのを忘れてはならない。

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確かにeスポーツ業界ごと成長するためには、完全にコミュニティの外側にいる人たちの関心を集める必要もあるが、第一にはコミュニティの中にいる人達を魅了し続ける必要がある。

ゲームは現実のスポーツと違い、別のタイトルや新作のリリース、バージョンアップがあるという特殊な環境の元に競技が行われる。形は違えど新しいものが次々に出て来るという状況だ。

したがって、ゲーム会社は既存のファンをうんざりさせてしまうようなことをすれば、1つのゲームを競技として見た時に、その競技が終焉を迎える可能性が高いのだ。

現実のスポーツではある競技の人気が小さくなっていったとしても少ないながら続ける選手はいるわけだが、ゲームの場合サービスが終了してしまえばもはや大会どころではなくなるのだ。

eスポーツとして一括りにしたがるメディアもいるが、実際にはゲームのジャンルやゲームのタイトル別に考えていった方が無難だろうし、人気獲得のためにはジャンルごとに異なる戦略が必要になってくるはずだ。

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