2014年のゲーム業界を語る上で絶対に外すことができないのが「#GamerGate」(ゲーマーゲート)だろう
オンラインゲームの話題ではないので当サイトではほとんど取り上げなかったが、ゲーム業界におけるジャーナリズムの腐敗と性差別、ハラスメントなど様々な問題を取り巻く一連の騒動は、欧米の一般ニュース番組で取り上げられるほど大きな注目を集めた。この論争は今も続いている。
Access Accepted第440回:北米ゲーム業界を揺るがす“ゲーマーゲート”問題
ゲーム系ニュースサイトから大手広告が消えるほどのダメージを与えている「Gamergate」とは?
#Gamergateの発端はインディーゲームメーカーのZoe Quinnという女性開発者の元恋人のEron Gjoniがネットの掲示板に、Zoe Quinnが自分のゲームを高く評価した記事を書いてもらうためにKotakuのライターと浮気したという誹謗中傷を書いたことから始まる。
これが論争を呼んだわけだが、人々がGjoniの書き込みを批判する一方で、根拠ない事実を信じてQuinnを批判する人もおり、その中でZoe Quinnの個人情報を晒したり、脅迫したり、ハラスメントをしたりという愚行をする者が現れ始める。
また、この件以外にも、特定のインディーゲームメーカーとゲームメディアが癒着しているのではないかという議論がされ、具体的な名前が上がるなど問題が広がりを見せ始める。
#GamerGateというハッシュタグは俳優のアダム・ボールドウィンがこの件に関して動画を投稿した際に付記したものだが、これがウェブサイトやSNS、掲示板等で使われ始める。
その中で8月28日にKotakuやGamasutraなどの海外のゲームサイトが一斉に「ゲーマーは死んだ」というような、ゲーマーのアイデンティティが性差別主義者とミソジニストによって破壊されたということを示唆するGamerGate批判記事を掲載したことで、ゲームメディアが共謀して世論誘導をしているのではないかと疑われた。
また、150人あまりのゲーム業界関係者で構成されたGameJournoProsと呼ばれるメールグループの存在が暴露され、競合しているはずの異なるゲームメディアが結託してトレンドを作ったり、スキャンダルの火消しをしているのではないかと物議を醸した。
こういったこともあり、#GamerGateというハッシュタグではゲームジャーナリズムの腐敗に対する議論がされるようになったのだが、Zoe Quinnへのハラスメントを発端としてゲームにおける性差別の問題も再燃した。
ゲーム業界は男性に支配された社会だとかねてから批判していたフェミストが脅迫されたり、他のゲーム開発者の女性がTwitterで脅されたり個人情報を晒されたりと別の方向にも問題が広がっていった。
また、4chanやReddit、NeoGAFなど海外の大手掲示板やフォーラムにおいてGamerGate関連の多数スレッドが削除されるなど、非常にセンシティブな議題となった。
GamerGate論争はあくまでゲームのジャーナリズムを良くするという目的だが、問題が複雑化してゲーム業界におけるミソジニーやフェミニズム、インターネットのハラスメントの問題と勘違いされがちである。
この一連の騒動にはもちろん大手ゲームメーカーも声明を発表しており、Blizzard EntertainmentのMike Morhaime CEOは11月のBlizzconで、「一部のグループが過去数ヶ月間本当に酷いことをしてきた。彼らはある人達の生活を悲惨なものにし、我々のゲーマーとしての評価に泥を塗った。それは正しいことではない。」と続け、「憎しみや嫌がらせを拒絶する態度を取りましょう」と述べた。
エンターテインメントソフトウェア協会は「ゲームのコミュニティや我々の社会には個人への攻撃や脅威を許す場所は存在しない」という声明を発表した。
#GamerGate論争は一時的な炎上ではなく、ゲームジャーナリズムのあり方やゲームにおける性差別、倫理問題について今後も議論が続いていくと思われる
Gamergate controversy – Wikipedia
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