ICARUS ONLINEの韓国サーバーで起きた、ユーザーの運営スタッフ脅迫&装備不正作成事件の全容

今年7月、MMORPG「ICARUS ONLINE」の韓国サービスで、運営スタッフの一人が管理ツールを悪用してレア装備を不正に作成していたということが明らかになった。

しかしその裏には、運営のスタッフが不正行為をしていただけでなく、事件を通報したユーザーが運営スタッフを脅迫していたという事実が隠されていたという。

事件発覚まで

7月14日、通報者(以下、A)が公式ウェブサイトの掲示板に、とあるユーザーを名指しして「異常に高性能な不正アイテムを持っているプレイヤーがいる、通報を完了した」という内容で投稿した。

投稿に添付されたスクリーンショットには、該当のプレイヤーが自らの不正行為を認めているような発言が記録されていた

当然ながら炎上したが、名指しされたプレイヤーとその周囲の人達は「通報者のAによる、悪意のあるスクリーンショットの捏造」だと反論した。

Aが不正アイテム事件に介入していたのではないかという疑惑が浮上

そんな中で運営元が公式に声明を出し、掲示板に書かれたようなアイテムコピーも、異常なアイテムオプションの生成も発生していないと釘を刺した。

不正だと名指しされていたプレイヤーたちは、虚偽の事実を流布した通報者Aを厳罰に処すべきだと運営側に対応を求めた

そんな中、公式サイトではなくコミュニティサイトinvenの掲示板に、「証拠は少し足りないが、一般に明かされていない不正なアイテムが実際に存在していた」という書き込みが行われた。

それに答えるかのように、Aが公式サイトの掲示板に「自分が持っている資料をアップする」と書き込みをした

掲示板の複数のユーザーが、不正行為の証拠の一つとして「テディレア(테디레아)」というキャラクターの名前を挙げた。

テディレアというキャラクターは、新規装備が実装されたばかりの頃に最上級オプションの新規伝説装備を完備していたという。

通報者Aは5月19日にそのキャラクターを運営に通報し、そのキャラクターはアカウント停止処分を受けたが、わずか1日で処分が解けたという。

Aは、テディレアが装っていたRMT業者との会話内容や、運営の介入、該当キャラクターが装備していたアイテムの状態、帰属アイテムの帰属状態を解除したスクリーンショットを投稿し、証拠だとした。

その投稿を読んだユーザーたちは「明確な証拠が何一つない」と疑問を抱き始め、掲示板はAへの反論で溢れかえった。

しかしその日の夜、運営のYD Onlineが、「内部の従業員によるアイテムの不正な作成および販売」を正式に認める告知文を掲載し、ユーザーに衝撃が走った。

既にその従業員は解雇されており、移管前の運営元であるWeMadeがそのスタッフを告訴していたこともあり、事件は一段落するように思えた。

そんな中、ゲームコミュニティサイトinvenに電話があった。
今回の事件はユーザーによる脅迫・恐喝事件というのが実情である」という内部告発だった。

不正プレイヤーだとされていた「テディレア」はWeMadeのスタッフ(以下、B)が会社に無断で作成した「不正な一般キャラクター」であり、この事実を以前に知った通報者Aが、スタッフBにアイテムを不正に作成するように脅迫していたというのが電話の内容だった。

Aは、Bが不正に作成したアイテムをギルドメンバーに獲得先を隠して販売、ギルド内のいざこざでギルドから脱退しようとしていたユーザーに恨みを抱き、自身が与えた不正アイテムの件で運営に通報し、脱退しようとしたユーザーにアカウント処分を受けさせていた・・・というのが事件の真相だった。

大まかな事件の発端と経緯

5月、WeMadeで請負業者として働いていたBは、「どうせ辞める日まであと少しだから、ダンジョンをもう一回やってみよう」と、「テディレア」というキャラクターを作成し、装備等を設定してゲームにログインした。

しかし、ライブサーバーで一般キャラクターを運営権限で作成&設定するのは厳格に禁止されていた事項。

それがバレてしまい、通報者のAがBのキャラクターを運営に通報すると言い出したため、BはAを振り払うためにRMT業者のフリをしてAに接触。

しかしAは騙されず、掲示板に「運営スタッフなのか開発者なのか大変なことになった。」という書き込みをする

怖くなったBはAに連絡を取る。

事実を知ったAは、Bを脅迫してアイテムを運営権限で不正に作成させ始めた

Aの要求は日に日に増え、Bは「これ以上は無理だ。仕事があまりにも大変になる。」と話し、止めるように説得するが、Aは「家族に警察関係者がいるので君を消すこともできる」と言ったり、Aと共謀した他のプレイヤーが「私はギャングだ。逃げられるものならやってみろ」などと言ったりして、脅迫が激しくなっていったという。

Bは請負業者であり、禁止行為がバレた場合の会社側からの処分を恐れてAの指示に従った。

脅迫は15日間ほど続き、AはBから受け取った装備セットを自分のキャラに装備して、1セット150万ウォン(約16万円)で周囲に販売して利益を得ていたという。Bはこの利益を一切受け取っていない。

続いていたAの脅迫は、ICARUS ONLINEの韓国サービス運営がWeMadeからYD Onlineに移管され、Bが会社を辞めたことで終わりを迎えた。

元スタッフのBはWeMade Onlineから告訴され、事件は警察の調査が終わり、検察に送致された状態となっている

invenの取材に対し、現在の運営元であるYD Onlineは、Aに法的措置を取る予定はないと答えた

Aからアイテムを購入したり、事件に関わったアカウントは全て永久停止処分を受けた

しかし、Aは事件に関与していたアカウントをBANされたものの、今でも別のアカウントで定期的に同ゲームをプレイしているという

事件が収束してみると、結果はなんとも歯がゆいものになった。

事件の発端となった、会社の禁止事項であるライブサーバーでのキャラクター作成をしてしまった元スタッフBは、Aから脅迫を受けた被害者でもあったが、解雇され、企業側から訴えられ、受ける処分が事件の関係者の中で最も重い。

一方でBが作成した「テディレア」を通報し、ある意味ではスタッフの問題行為を見抜いたA。しかしBの弱みを突く形で脅迫をし利益を得るという、詐欺罪や恐喝罪のような刑事事件と言ってもいい悪質な行動をしたAには法的措置はなく、アカウントが処分を受けたというそれだけである。

そして、社員が禁止行為をしていたり、不正コピーをしていたにも関わらず見過ごし、事件の隠蔽を続けていた運営会社。

終わってみればAの責任があまり問われていない。むしろAから装備を購入し、お金とアカウントを失った他のユーザーたちの方が精神的なダメージはAより大きいのかもしれない。

オンラインゲームにおいて、「運営がいたずらしてるんじゃないか」「運営との癒着があるんじゃないか」という話をユーザーが昔からしてきたが、実際にそういった事実を明らかにするために本格的な調査や申告がされることはほとんどなかった。
しかし、プレイヤーから「不確かな」情報提供は幾度と無くあった。

RMTサイトでかなりの額のゴールドが販売されているにも関わらず、RMT利用者が処分を受けないとか、BOTをいくら通報しても処分されないとか。その度に運営が絡んでいるんじゃないかと掲示板等で噂されることは多かった。

しかし今回のICARUS ONLINE韓国サーバーの事件は、まさに”運営の介入”そのものだった。運営スタッフが脅迫されていたという歪んだものだったが、ユーザーの小さな疑問が運営会社の信頼失墜にまで至った事例である。

ソース: inven

コメント

PR
タイトルとURLをコピーしました