11月7日に韓国サービスを開始したMMORPG「Lost Ark」は、最大同時接続者数35万人、サービス開始1ヶ月間の売上約40億円を記録、韓国のオンラインゲームシェアでも10%以上をマークし続け上位にランクインするなど久々にヒットした新作MMORPGとなった。
ではなぜ「ロストアーク」はヒットできたのか。その理由を探ってみる。
ロストアークがヒットした理由
1. 革新や真新しさは求めない
韓国の大作オンラインゲームは過去10年近く、MMORPGの革新を追い求めていた。
「TERA」が今までにないようなアクション戦闘をMMORPGにもたらし、「ブレイドアンドソウル」は格闘ゲームのようなコンボ要素をMMORPGに取り入れ、「黒い砂漠」はノンターゲティングのアクション戦闘に加えてシームレスでインスタンスダンジョンのない世界を作るといったように、韓国の大作MMORPGはとにかく今までのMMORPGにない要素を開発する事に力を入れていた。
一方でLost Arkは革新を求める事はせずに、既存のMMORPG及びハック&スラッシュゲームの特徴を今のトレンドに合わせて良いとこ取りをし、なおかつ100億円もの開発費を投じた。
開発元のSmileGateは、MMORPGジャンルはもはや全く新しいシステムを取り入れる余地がないと早い段階で割り切る事で、最初からRPGの本分である戦闘・冒険・探索・収集という所に集中して開発し、MMORPGとして考えられるほとんどのコンテンツを体験できるようにロストアークを作ったようだ。
これにより、開発の段階で革新的な新しい仕組みの調整に苦労する必要がなく、遊びやすさとコンテンツの充実という部分で優れたゲームが完成し、多くの人を惹き付けることに成功した。
クォータービューにしたことで、LoLでクォータービューに慣れた若い世代もスムーズにロストアークの操作に適用できるという強みもあった。
2. 久しぶりの『まともなMMORPG』だった
多額の開発費が投入されたAAA級のMMORPGはグローバルで見ると2014年のElder Scrolls OnlineとWildstarが最後で、その後に登場したゲームは中規模のものが多い。
韓国産ではICARUSやBLESSなどが登場したが、いずれも成功したとは言い難く、BLESSに至っては韓国サービスが終了してしまっている。メイプルストーリー2も2015年に登場したものの、不発に終わっている。Tree of Saviorも韓国市場ではヒットと言えるレベルには受けなかった。
Aion: 2008
TERA: 2011
Blade & Soul: 2012
ArcheAge: 2013
黒い砂漠: 2014
ICARUS: 2014
メイプルストーリー2: 2015
Tree of Savior: 2015
BLESS: 2016
韓国産のMMORPGは上記のような流れとなっているが、BLESSが失敗に終わった事で、韓国のMMORPGファンからすれば、数年間まともな大作MMORPGが出ていないという状況で、業界的にもPCのMMORPGには悲観的になっていたようだ。
また、ライバルとなるはずだったリネージュエターナル(Project TL)も開発がやり直しになったため不在。
結局のところ、需要がないのではなく需要はあるがまともな新作MMORPGがないという状況が続いてた韓国市場で、久々に『普通に遊べるMMORPGの新作』だったのがロストアークだったというわけだ。
欧米の大手メーカーはMMORPGを作るのをやめた、韓国の他のメーカーはモバイルMMORPGの開発に全力で、PCのものはまともなのが出てこない、中国の企業は・・・というような状況の中、需要を満たせるゲームが出てきた事はヒットの大きな要因になった。
3. Twitch・YouTubeなどでの拡散
今回ロストアークのヒットの足がかりになったのがTwitchやYouTubeなどの映像配信サービスだ。
Twitchではグローバル版ではない韓国サービスにも関わらずトップページにロストアークが表示されるほど注目を集めた。
また、同時期にBlizzardがDiabloのモバイルゲームを発表して炎上し、PCのハック&スラッシュRPGファンが失意に沈む中で、欧米のストリーマーがロストアークの実況プレイをして真のディアブロ4だと呼ばれる等、ロストアークがサービスを開始した時期がかなり良いタイミングだった。
ロストアークは韓国市場ではMMORPGファンには知られていたが、一般的なゲーマーにはそこまで馴染みはなかったと思われる。
ロンチ時点でサーバーが6つしか用意されなかった事からもそれが窺えるが、Twitch等を通じて一気に知れ渡ったためにユーザーが殺到。ログイン待機が3時間を超えるなど途方もなく長くなり、サーバーも不安定化するなど、運営にとって予想外のプレイヤー増加が起こった。現在ではサーバーは10個に増設されている。
▼YouTuber・ゲーム実況配信者のQuin69氏はロストアークを次のように評価している
4年前にYouTubeでこのゲームを初めて見た時、ムービーだけが良いクソゲーだと断言したが、私は間違っていました。
ロストアークが全てのMMORPGとアクションRPGを打ち負かす事はできないと思いますが、このゲームは最高のクォータービューMMOアクションRPGだと思います。
欧米に進出すれば成功できるでしょう。とてもよく出来ており、本当に面白い。2019年に海外でもリリースされる事を祈っています。
4. 丁寧な作り
韓国産のゲームとしてはかつて類を見ないほどレベルデザインが緻密に設計されているという。
クエストの動線が合理的で優れているようで、ロストアークに批判的なユーザーですらロストアークのレベルデザインはトップクラスだと認めるほどだという。これにより、MMORPG慣れしていないプレイヤーも比較的スムーズにゲームを進行できるとのこと。
序盤の評判が悪いものの、メインストーリーの演出やシネマティックダンジョンの演出は好評を得ているようだ。
メインストーリーの物語そのものの評価は賛否両論のようだが、作業になりがちなサブクエストのストーリーはギャグやパロディを多く含んでいて好評だという。
ロストアークのパフォーマンス最適化という部分は韓国のMMORPG史上で最も優秀だという。比較的低く設定された推奨スペックを満たしていれば、画面にオブジェクトが大量にあってもフレームレート低下がほとんど起こらず、数十人のプレイヤーが集まってスキルを乱射しまくってもフレームレートの低下は微々たるものだという。
これにより、新しくPCを買い換えなくても数年前のゲームPCでも快適に遊べるようになっているようだ。
グラフィックスが特別優れたゲームではないが、韓国の量産タイトルにあるような安っぽさは感じない。
アクションの操作性、爽快感はCBTで幾度か調整され、改善された。
「まともだった」という理由とも共通するが、最適化不足だったり、システム面が雑な作りになっていがちな韓国のMMORPGにおいて、全体的に丁寧さが感じられ、初期のプレイヤー離れを防ぐ事ができたようだ。
5. 比較的まともな運営・開発
ロストアークの運営は比較的良いという評価がされている。
不正なプログラムの利用者への対応や、バグを悪用したプレイヤーの処分も行っているようだ。
サーバーの問題など、いくつかの点でプレイヤーからの不満の声もあがっていたようだが、11月末のアップデート及びアップデート予告で、サービス開始後から集まったフィードバックにしっかりと対応し、ユーザーの声を聞き入れる姿勢を示した。
また、サービス開始前はアイテム課金が不安視されており、サービス開始時からいきなり課金アイテムを商魂たくましくも売り始めたが、Pay-to-Winにならない構造で、ゲーム内でも課金アイテムとして売られているものを入手できる代替手段があるなど、配慮がしっかりとされているようである。
ロストアークは何かが偉業と言える程に傑出したゲームではないが、いくつか不満点がある中でも普通に遊べるよく出来たMMORPG、その事がPC MMORPGの新作が少くなった市場でMMOファンのニーズを満たすことに成功したと言える。
韓国の業界内ではロストアークが長期的に成功する可能性が高いという見方がされている。
既に中国サービスと欧米サービスは決定している。果たして国内ではどの企業がこの世界的に期待されているMMORPGのサービスを行うのか注目されるところだ。
参考: namu.wiki
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