1月16日より韓国サーバーの正式サービスがスタートするMMORPG「ArcheAge」、日本や中国、ロシア、欧米などでのサービスも視野に入っている。開発期間6年、開発費30億円超の大作MMORPGだ。
サンドボックス型のゲームプレイを中核とし、最近のMMORPGの中では自由度のかなり高い本作だが、その自由度の高さ故に日本サービスの際にプレイヤーから好かれそうな要素と嫌われそうな要素が存在している。
本稿では、日本サービスの際にプレイヤーから注目を集めそうな要素と、日本のプレイヤーからは賛否両論を集めてしまいそうな要素をそれぞれ5つピックアップして紹介する。
日本で好まれそうな要素 トップ5
※これらの要素のバランスが良いという意味ではありません
1. 自分たちの船で自由に航海
ArcheAgeの最大の特徴の一つは船に乗って大海原へ航海に出ることができるという要素だ。
ガレオン船のような大型船舶の製作には膨大な量の素材が必要となるため、仲間で力を合わせて作るのが推奨されるが、こういったわかりやすいプレイヤー同士の協力は日本では好まれそうだ。
また、海ではモンスターが出現したり、ゲーム中最大のボスモンスター「クラーケン」が出現したりする他、海洋資源の採集や養殖も可能。地図には載っていない島も存在し、プレイヤーの冒険心を擽ることだろう。海で渦潮や嵐に遭遇することもある。
そしてこれもArcheAgeならではの要素「海上戦」(海戦)
海で敵対勢力や海賊のプレイヤーたちに遭遇した場合は、海上戦が繰り広げられる。
敵の船を大砲で攻撃したり、敵の船に乗り移って白兵戦を行う。
▼海上だけではない。ダイビング用の装備があれば海底に潜ることも・・・(海底コンテンツトレーラー)
2. 農業&生産
こちらもArcheAge最大の特徴、そして最も重要なコンテンツ。
どこにあるかもわからない素材をプレイヤーが採集だけで集めるのは無謀。そこでプレイヤーは家庭菜園を持ち、目的の素材を手に入れるために農業や林業、畜産業を行うことになる。
種や苗を植えて水を与え、数十分~数時間~十数時間という時間が経過すると、目的の作物を収穫できるようになる。
果樹などは、果物を収穫することもできるし、伐採して丸太を手に入れたり、肉や卵、牛乳、羽毛などの為に家畜を育てることもできる。苗には水を与え、家畜には穀物を与えることで採集できるまでの時間が短縮するなどの効果がある。
生産では装備や薬といったものから家や船に至るまで様々な物を製作できる。
また、素材を集めて特産品を製作し目的地に届ける(重い荷物を背負うことになる)ことで、特別な報酬を得られる「貿易」というコンテンツもある。特産品を大量に輸送するための貿易船を造ることもでき、こちらも大勢のプレイヤー同士で楽しめる。尚、敵勢力のプレイヤーがいる場所への貿易も存在する。
農業や生産、採集でも割とたくさんの経験値を得ることができる。
ちなみに植物はどこにでも植えることができるので、フィールドの景観を変えてしまうこともできる。
ただし、家庭菜園と公共農場以外の場所に植えると他のプレイヤーに収穫されてしまう。(自分の農園をフレンドやギルドメンバーと共有することも可)
製作した装備はドロップ装備やクエスト装備よりも強いことが多くセットボーナスもついているように、ArcheAgeでは生産の価値というものが高い。
3. ハウジング、築城、造船
ArcheAgeにはハウジングのためのマップというものはなく、普通のフィールドの住宅建設可能地域にマイホームを構えることができる。
家は小型、中型、大型のサイズと西洋風、東洋風、水上住宅などの種類があり、それぞれ必要な材料と家を建てることで発生する税金が変化する。
家の中には生産で入手できる様々な家具を設置できる。
また、大規模なギルド(遠征隊)では建築に膨大な物資が必要な城を建てることも可能で、建てた城を使って攻城戦を行うことになる。
ArcheAgeにはコミュニティが「家族」と「遠征隊」の2つがあり、少人数の家族、大人数の遠征隊という両方に所属することができる。家族は家や菜園を共有できる。
4. 豊かで美しく広大な世界
プレイヤーはArcheAgeの世界で豊かな自然と広大な土地、そして様々な文化の都市を目にすることができる。
ArcheAgeのゲームエンジンにはCryENGINE 3が使われ、DirectX 11にも対応、高解像度のテクスチャとリッチなグラフィックスで描かれる世界は非常に美しい。
ハイスペックPCが必要となるが最高設定のグラフィックスは驚くべきもの。
▼ゲームエンジンはCrysis 3でも使われているCryENGINE 3
ArcheAgeでは素材アイテムは重要で、伐採できる木や採掘できる鉱物を見つけるために世界を探索するのも良い。植物は見つけても成長しているものでないと採れない面白いシステム。
また、宝の座標が書かれた宝の地図(?)を入手することもあり、六分儀を使って宝探しもできる。
家庭菜園の広さに限界を感じたら、自分だけが知っている人目につかない場所に野菜や木の苗を植えておいてあとから訪れて収穫したり伐採したりということもできる。
▼伐採できる木はフィールドに生えているものも切り倒すことができる
▼ArcheAgeの世界には公共交通機関があり、飛行船(?)にも乗ることができる。
5. インタラクティブなオブジェクト
MMORPGで当たり前だと思われがちだが意外とこの仕掛けのないゲームが多い。
ArcheAgeでは、椅子に座ったり、ベッドに寝たりするのはもちろん、焚き火に火を灯したり、明かりをつけたり、扉や窓を開けたり閉めたり、単にオブジェクトが背景のように配置されているだけではなく、プレイヤーの操作に反応してくれるのが良い。開発会社は相互作用と呼んでいる。
日本で敬遠されそうな要素 トップ5
※これらの要素が破綻しているというわけではありません
1. PK&紛争
PKは基本的に二種類あり、勢力間でのPKと同じ勢力内でのフリーPKにわかれている。
ArcheAgeは西の大陸「ヌイア」、東の大陸「ハリハラ」の2つの勢力に加え、北に位置する旧大陸の第3勢力が存在する。
異なる勢力のプレイヤーの名前は赤い文字で表示され、PK可能エリア(中立地域)なら攻撃をしかけることができる。
フリーPKはCtrl+Fで自由攻撃モードをオンにすることで可能となる。フリーPKには犯罪の要素が絡んでくるため、裁判にかけられて投獄される可能性がある。
紛争は、敵対勢力のPKが可能な中立地域にはそのエリアの紛争状態というパラメータが存在する。
このパラメータは該当するマップで勢力間のPvPが発生すると上昇し、
平和→よぎる不安→危機の影→広がる危険→静かなる進撃→漂う戦雲→紛争→戦争
という段階で紛争状態のパラメータが増加していく。
紛争状態になると、敵対勢力のプレイヤーをPKすると名誉ポイントを貰うことができ、PKというよりRvRに発展する。逆に紛争・戦争状態になっているマップでPKされると、名誉ポイントを失う。
また、紛争状態は60分間続くが、その状態でさらにPvPが加速すると「戦争状態」となり、さらに追加で60分間そのマップはRvRの対象となる。(戦ってるプレイヤーを横目にクエストをしていても問題はない。)
戦争状態が終結してから2時間はそのエリアでのPKは出来なくなる。
この中立地域はレベル30台前半以降のマップと海が対象となるため、序盤にこの勢力間戦争に巻き込まれる心配はない。
しかし、クエストを進行するマップでPKやRvRが起こり、まともにクエストが進められなくなるのでこれは日本のプレイヤーの間では好みがわかれそうだが
ArcheAgeでは自分の大陸を一歩出れば戦場だと認識する必要がある。
(invenのインタビューでは、開発のXLGamesはPKのできないPvEサーバーを少なくとも韓国では多くの要望がない限りは用意するつもりはないようで、PKを不可にしてしまうとArcheAge特有の攻城戦などにも影響があり、開発のコンセプトにも反しているからとのこと。)
2. 海賊プレイヤー
犯罪行為を繰り返し、累積悪名ポイントが3000を超えたプレイヤーは「海賊」(無法者)となる。
海賊になると街のNPCが利用できなくなり、他の全てのプレイヤーとNPCから敵として扱われることになる。
そのため、海賊たちの事実上の本拠地は大陸の外、地図にも載っていない伝説の「海鳴島」となる。
海賊同士ならどんなにPKをしてもペナルティがないが、死亡すると無条件で裁判所へ送られ、重い刑が言い渡されることもある。また、一般のプレイヤーは海賊をPKしても犯罪にならない。
この海賊システム自体は悪を演じるという意味で、ロールプレイの幅を広げる面白いシステムなのだが・・・。
3. 犯罪と裁判
ArcheAgeでPKと農作物の窃盗を行うと血痕や足あとがフィールド上に残る。
この血痕や足あとを使って犯罪行為を申告することができ、申告されると犯罪を犯したプレイヤーには犯罪スコアが加算される。
犯罪スコアが50点を超えた状態で死亡すると、裁判を受けるか自白して刑務所に入るかを選択できる。
ただし、裁判で有罪となればどのみち刑務所に入ることになる。(海賊は無条件で裁判)
裁判は陪審制で、陪審員はレベル30以上のプレイヤーの中から無作為に選ばれる。ただし、陪審員を拒否することも可能。
裁判に参加した陪審員は被告人の犯行内容を確認することができ、それを参考に評決を下すことになる。
また、被告人は自分が無実だという場合は1分間で無実を証明する。
有罪の場合、陪審員の決定にしたがって決められた時間の間、刑務所で時間を過ごさなくてはならない。
重い判決では180分もの間刑務所で労役をしながら過ごさなくてはならない。
尚、刑務所からはプリズンブレイクばりの脱獄をすることができる。
脱獄してもデバフによってすぐに戦うことはできないが、刑務所での量刑に耐えられない人は脱獄を選ぶのもあり。ただし、脱獄も犯罪行為に含まれる。
4. ストーリー要素の薄さ
ストーリーは種族ごとに存在しているものの、演出やその内容自体の存在感がかなり薄く、日本のプレイヤーが求めるレベルのRPGのストーリーテリングができていない。
ストーリークエストのカットシーンは静止画+ナレーションという地味なもの。
5. BOTや業者にとって都合の良いシステム
生産要素がゲームの中核にあるため素材アイテムの価値が高いArcheAgeの経済はRMT業者にとって非常に”稼ぎやすい”ものになってしまう可能性が高い。
家庭菜園の仕様上アカウントを複数作ったほうが圧倒的に有利なため、それも問題となる可能性がある。
また、戦闘システムも彼らにとっては”慣れた”ターゲット方式であるためにBOTが大量発生するのはほぼ間違いなさそうだ。運営の能力が試されることになる・・・。
▼オープンベータで確認された採集BOT
ArcheAgeは農業やハウジングのようなほのぼのとした要素があるものの、その一方で非常に激しい資源を巡る争いをしなければならないのも事実で、そういう対人コンテンツを含め、ここ数年間のMMORPGの流行とは異なるサンドボックス型のコンテンツは日本のユーザーにどう映るのかが注目される。
上で紹介した要素はArcheAgeのほんの一部で、尚且つ日本で好かれそうなものとそうでないものというくくりで選んだが、実際にはこの他にも議論されるべき、また現在進行形で議論されている要素がいくつも存在する。
複雑で多彩なコンテンツを持っている本作だけに、国内パブリッシャーの手腕も問われそうだ。
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