日本サービスが2016年9月28日より開始されたMMORPG「Tree of Savior」
様々な問題点の根幹を生み出すことになる開発の過ちとは。
バグと最適化: ほとんど改善されなかった韓国CBT
「トンナム」 これは韓国におけるTree of Saviorの蔑称だ。意味は「クソの樹」
Tree of Saviorの救世主の樹という意味から生まれたようだが、こんな蔑称がついたのにはそれなりの理由がある。
・CBTから続くゲームのバグがあまりにも多かったこと
・フレームレートの低下など最適化の問題があまりにも多かったこと
・緊急メンテナンスがあまりにも多かったこと
・開発元の対応が酷かったこと
・ゲームバランスが酷かったこと
・クライアントのセキュリティ問題
・数多くの「事件」が発生したこと
・チートやBOTが蔓延ったこと
など・・・原因は数知れない。
(韓国のWikiに掲載されている「Tree of Saviorで起こった事件と事故」)
2015年末~2016年初頭、韓国サービスの初期には特に顕著であったが、3回行われたクローズドβテストの中で不具合がほとんど改善されない、第1次クローズドβテストの時に報告されたバグが、オープンベータテストになっても修正されないという事態となっていた。
ゲームのサービスインがあまりにも早すぎた。まだベータテストを続けるべきだった。2015年12月にサービスを開始した韓国における評価の大半はそういったものだった。
■バグ紹介動画
コミュニティ: 重視するという発言はどこへ?
2011年にゲームが発表された際、Project R1は「コミュニティを重視する」ゲームとして説明がなされた。
しかし蓋を開けてみれば、コミュニティ要素が欠如したゲームだった。
ギルド設立のためには特定のクラスに転職しなければならず、それも容易とは言い難い。
その代替になるようなコミュニティ機能も存在しない。
韓国サーバーでは当初ギルド設立に1000万シルバー必要だったが、その後100万に下方修正。日本サービスではさらに緩和され50万に。
また、一本道のように感じる狭いゾーンを繋げただけのマップの構造や、レベルに応じたクエストの進行方式、そして、プレイヤー間の交流というよりも機能的な関係に重点が置かれたインスタンスダンジョンも疑問が残る。そもそも企画当初はフィールド中心のゲームプレイが掲げられていたはずだが。
同社開発のグラナド・エスパダよりも退化しているのではないかと言われるチャット機能。
「トークン」によって雁字搦めにされた経済システム。
プレイヤー間の純粋な交流を促進するようなコンテンツは非常に少ない。
Tree of Saviorは「コミュニティ重視」などとは程遠いのが現状だろう。
発表当初のコンセプトはどこへ行ってしまったのだろうか?
ゲームプレイとバランス: 行方不明のコンセプト。3次CBTでインスタンスダンジョン初実装!?
Tree of Savior韓国サービス初期の宣伝文。
Tree of Saviorは自由度を重視したオープンワールドMMORPGです。
南部と北部に分かれたマップで複数の場所を自由に歩き回ってTOSの世界に出会ってみてください。
複数の村と広いフィールド、インスタントダンジョンや秘密の場所を探索するすることができます。
オープンワールド・・・???
もしTree of Saviorをある程度プレイしたことがあるのなら、これは嘘八百のように感じることだろう。さすがに日本サービスではこんな宣伝はされていない。
Tree of Saviorの韓国1次クローズドβテストの頃はクエスト中心のゲームプレイで、狩りの経験値はかなり低めに設定されていたが、それにも関わらずある程度進めるとクエストがなくなってレベルアップ不可能になるというめちゃくちゃなバランスとなっていたようだ。
そのため2次、3次CBTでは狩り経験値を増加するなどの対策が取られた。
第3次クローズドβテストでは「インスタンスダンジョン」も実装。
最後のCBTだった3次CBTで初めてインスタンスダンジョンを実装するという暴挙に出たのだ。そんな遅いタイミングで実装してゲームバランスへの影響は大丈夫だったのか。
フィールド中心のゲームプレイを重視していたように思われたTree of Saviorは突如としてその方向性を変えることになる。
そしてインスタンスダンジョン中心のレベルアップ構造になってくると、気軽にパーティを組むことも難しくなり、ゲームの自由度は一気に失われる。そもそも自由度はないに等しかったが・・・。
そして、企画当初は主軸としては位置づけられていなかったインスタンスダンジョンコンテンツの大量実装により、キャラクター間のバランスは崩壊する。
フィールド中心のゲームプレイという企画の元で作られた多彩な職業だが、プレイヤーにとっても開発チームにとっても厄介な悩みの種となってしまったのだった。
また、韓国サービスで問題になったギルド戦争。2016年4月のアップデートまで無差別な宣戦布告が可能であり、特に利益も不利益もない無駄な戦いに巻き込まれるギルドが不満を感じたのだった。現在では中立宣言機能が導入されているが、これによりフィールドにおける競争が減るという意見も出るなど、いまいちゲームの方向性がわからないシステムの一つだ。
先述のコミュニティ要素の欠如もそうだが、Tree of Saviorの企画当初に練られたコンセプトがことごとく破壊され、ゲームそのものがおかしな方向へ向かって行ったのだ。「探索」や「自由度」という言葉とインスタンスダンジョンを周回するゲームプレイは真逆に位置するわけだが・・・。
アートディレクション: 発表時の方が魅力的?
Tree of Saviorが2011年に「Project R1」として発表された際、ラグナロクオンラインを彷彿とさせるグラフィックスと、色鮮やかなビジュアルが大きな注目を集めた。
2Dではなく、複雑な工程を経て開発された2D風の3Dグラフィックスだ。
しかし、「Tree of Savior」というタイトルが決定して実際のゲーム画面が公開された際、グラフィックスは若干の失望を招いた。
ゲームの背景部分もキャラクター部分も「見栄え」は明らかにProject R1として公開されていたイメージの方が優れていたのだった。
開発チームは、ToSのグラフィックス開発にかなり苦労していたようで、「普通に3DMMORPGを作った方がずっと楽」という発言もみられた。先述のバグの多さや最適化不足そこから生じたものなのかもしれない。
サービスインを遅らせてゲームの改善を待った日本サービスは現段階では奮闘していると言えるだろう。
しかし、Tree of Saviorの韓国サービスはオンラインゲームランキングで50位圏外、Steamのグローバルサービスも接続者数がピーク時の10分の1まで減少しており、そうなってしまったのは本稿で紹介したような事が原因の一端となっている。
Tree of Saviorの現役プレイヤーの方が感じるゲームの問題点等あれば、コメント欄で教えてください。
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