スマホゲーの「詫び石」が子供にとって害悪な仕組みである理由

近年、ソーシャルゲームやスマートフォンゲームにおいて、運営がなんらかの不手際をした際に、ガチャ等に使える「石」をプレイヤーに配布するという「詫び石」が常識化しつつある。

しかし、この「詫び石」は子供にとって非常に害悪である。その理由を本稿で解説する。

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「補償」は本来、損失を補填するものである

そもそも、スマートフォンゲームを含めたオンラインゲームサービスにおいて、運営側が利用者に謝罪だけでなく何らかの補償をしなければならないのは、利用者が運営側に支払った分の対価が不手際によって正しく受け取れない時や、利用者のデータが運営側の不手際で破損したり消失した時だ。

サーバーのロールバックをすることになり、プレイヤーが投資したものが巻き戻されてしまった時や、月額課金のように時間に対してお金を支払っていた場合に通常とは異なる緊急メンテナンスやサーバー障害で課金した利用時間が失われた時、運営側の不手際でデータが消失した時、商品を購入したのに受け取れなかった時、ユーザーの個人情報が流失した時などがその例だ。いずれもユーザーは「損失」をしている。

損失がないのに補償?

しかし、近年のスマートフォンゲームの「詫び石」というのは、例えば、メンテナンスが長引いた時やサーバー障害が発生した時にプレイヤー全員に実質的に課金アイテムに近い「石」を配布するということをしている。
たとえそのプレイヤーが一銭たりとも課金していなくても、補償を受け取ることになる。

メンテナンスが長引いたりサーバー障害が発生したりで、月額料金や月額サービスのようなものに課金している人に対して補償を提供するのは自然なことだが、実害を被っていない無課金のプレイヤーに補償を簡単かつ頻繁に出す現在の業界の在り方は非常に危険だ。

実害のない利用者は、本来であれば運営の謝罪の一言と今後の具体的な解決策の提示で納得すべきだ。

そしてこの「詫び石」は子供の利用者と、一部の精神年齢が子供並の利用者に間違いなく悪影響を与えている。

補償は本来、「失ってしまった部分を埋める」という形の補填であるのに対して、昨今の全ユーザーへの「詫び石」は、特に何も失っていないが「価値のあるものが貰える」という、プラスマイナス0ではなくプラスになるようなニュアンスが含まれている事が多い。

本来、プラスになる事は「プレゼント」としてポジティブなイベントで行うべきであり、謝罪の意味で行うべきではない。

「ゆすり」一歩手前の考え方に結びつきかねない

「詫び石」は無課金でゲームを遊んでいる子供達の考え方に悪影響を与える可能性が高い。

子供の時からこの「詫び石」という謝罪方法に触れた場合、「運営がミスをしたら石(=実質的な課金アイテム)を配るのが当然」という歪んだ考えが生まれてしまう。

相手の失敗に対して能動的に、金銭あるいはそれ相応の補償を”要求”しようとする習慣が身についてしまいかねない。ゆすりの一歩手前である。

極端な話、レストランで料理が出てくるのが少し遅かったから何かサービスしろと言っているようなものである。

「石を配っておけば大丈夫」

最初にこの「詫び石」を始めたと言われるガンホーは、文面だけよりも誠意が伝わるからという理由でこれを始めた可能性が高いし、当初はユーザーも謝罪として石を配る運営を評価していたはずだ。
しかし、安易に詫び石を配りすぎた結果、ユーザーを勘違いさせてつけ上がらせてしまったのではないだろうか。

また、ある意味では「こいつらは石を配っておけば黙るだろう」という運営側の傲慢な態度の表れなのかもしれない。
実際に石を配っておけば大丈夫だろうというような、いい加減な対応をしているゲームも少なくない。
むしろゲームデザインの中に詫び石を配る事が組み込まれているタイトルも最近はありそうだ。

冗談でなくなりつつある

PCの基本プレイ無料オンラインゲームで、サーバー障害が出たり緊急メンテナンスが行われたとしても、自分が実害を被っていない限りは、運営に対して課金アイテムを配れと要求するような考えに至った人はほとんどいないのではないだろうか?少なくともここ最近までは・・・。
その昔は月額課金制のMMOで丸一日緊急メンテナンスでも特になんの補償もなかった気がするが・・・

メンテナンスがあまりに頻繁だとそれはそれで別の問題になってくるが、スマホゲームも含めたオンラインゲームでログインしたくてもログインできない時間が発生してしまうのは致し方ない事だ。

緊急メンテナンスが入った、メンテナンスが延長した、それだけで「詫び石」を全ユーザーに配るというのは一見寛大で誠意があるように思える。しかし、スマホゲームを遊ぶ子供達が、「謝罪」と「補償」という行為の本質を理解しないまま「詫び石」に慣れてしまうのは健全とは言い難い。

大人は冗談で「詫び石はよ」と言っている(と信じたい)。では子供達は・・・?

前述したように、補償は顧客が明確に損失を被った時に行い、全ユーザーに石を配るのならイベントやお礼として、プレゼントだけにすべきだろう。

そもそも、プレイヤーの戦力に直結するようなガチャを引ける「石」をそれだけ容易く配る事ができるわけで、販売価格は果たして適切なのかという疑問も出てきそうだが、今回はそこには触れないでおく。

詫び石をたくさん配ったから神運営?
冗談を言わないで欲しい。

詫び石なんて配る必要がない安定したゲームサービスを提供し、ユーザーの意見を真摯に受け止めてくれる運営チームの方がよほど神運営ではないのか。

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