World of Warcraftの月額課金者が最盛期よりも500万人減り、毎年のようにリリースされるMMORPGが次々と長期運営に失敗し、もはやファンタジーMMORPGは時代遅れという意見も多い。
本稿では、なぜ旧来的なMMORPGは衰退し、滅び始めているのか、そしてMMOジャンルの未来はどこにあるのかを考えてみる
MMORPGが人気だった理由
そもそもMMORPGが2000年代前半に人気が出た理由とは何だろうか?
ウルティマオンライン、エバークエスト、FF11、ラグナロクオンラインなど、黎明期のゲームはそれまで未知のジャンルだったMMORPGを一気に人気ジャンルにするには十分だった。
その魅力は言うまでもなく、他の大勢のプレイヤーと世界を共有し自分が仮想空間の一部になることができるということだろう。
当時は「コンテンツ」などという言葉でゲームの尺度を測る必要がなく、趣が全く異なるMMORPG全てが先駆者であった。
どのMMORPGにも問題があり、また、ゲームプレイ自体も当時のPCゲーム、コンソールゲームのクオリティには及ばなかったはずだろう。
しかしそれよりも、オンラインで見ず知らずの他のプレイヤーと遊べることそのものが魅力的だったわけだ。
それがクォータービューのクリックゲーなのか、3Dなのか、リアル志向なのか、ファンシー系なのか、PvPがあるのか、などの違いはあれど、どんなにハードコアでマゾい仕様であってもMMOであれば良かったのだろう。
最近のMMORPGしか知らない人は、デスペナルティで経験値を大量に失い、レベルを1上げるために1週間以上かかるようなMMORPGには目を疑うことだろう。
World of Warcraftの登場
欧米においては、MMORPG=World of Warcraftという式が成り立つほどに、BlizzardのWoWは圧倒的な人気を誇った。
最盛期は月額課金者が全世界で1200万人という途方も無い数字を記録。
名実ともに最高のMMORPGが誕生した。
World of Warcraftは2004年に登場したが、その人気の秘訣は圧倒的なとっつきやすさにある。
ウルティマオンラインやエバークエストなど、それまでのMMORPGの長所を集め、ユーザーインターフェイスやHUDを改善し、クエストによる動線を突き詰め、狩りなどの作業的な部分を減らし、インスタンスダンジョンを含む「コンテンツ」という概念をMMORPGのジャンルにもたらした。
World of Warcraftは、それまでのMMORPGよりもライトユーザー(カジュアル層)に配慮したゲームデザインに加え、世界最高レベルのカスタマーサポート、当時ではトップクラスのグラフィックスなどもあいまって、コアゲーマー向けのイメージのあるMMORPGのジャンルの入り口を広げることに成功した。
WoWのサービスが行われていない日本では未だにMMO=廃人のイメージしかないが、WoWの登場によってMMOがカジュアルゲーマーでも楽しめるジャンルになったわけだ。
しかし、WoWがサービスを開始したのは今から10年前のことであることを忘れてはならない。
WoWの模倣・開発費の高騰とリスク回避
2000年代後半になると、各国のメーカーがWorld of Warcraftをお手本としてMMORPGを作るようになった。
世界観、キャラクターのデザイン、ストーリー、スキルなどは違うものの、基本的なシステムのデザインはWorld of Warcraftとほとんど変わらなくなった。
しかし、模倣ということは後追いでしかなく、どのメーカーも先駆者であるWorld of Warcraftほどのクオリティやコンテンツ量に到達することはできなかったわけだ。
▼AionやRiftのようにWoWを手本としつつ高品質なゲームはむしろ少ない
加えて、グラフィックス技術の進歩によって、開発コストが高騰し、カジュアルMMOでなければ数十億円は当たり前にかかってしまうようになった。
そのことがリスク回避という考え方に繋がり、余計に「WoWもどき」のゲームが生まれることになる。
World of Warcraft以降の大作ゲームがそれほど大きな成功を収められなかった背景には間違いなくWoWへの意識があるのだろうし、WoWライクなゲームを作ってみて初めてその開発や運営の難しさに直面しているはずだ。
MMORPGが衰退した理由
WoWもどきのMMORPGが増えたことで、ユーザーには同じようなMMORPGばかりプレイしているという感覚がいつの間にか染み付いてしまっていた。
モンスターを倒せばアイテムがドロップする。ダンジョンでボスを倒せば良いアイテムをゲットできる。
クエストをこなしてどんどん先に進むが、速くレベルを上げるためにクエストは読まずにとにかく必死になってモンスターを狩る。レベルキャップに到達してひすたらアイテムファーミング。
しかしそれはどこかでプレイしたことがあるような・・・
日本において「FF11」、「RO」、「マビノギ」、「FEZ」、「Master of Epic」などが長年人気だったのは、リリース当時としてはユニークであり、その後大量に登場したWorld of Warcraftもどきのゲームではなかったからだと言うことができる。
黎明期は様々なタイプのゲームがあったMMORPGのジャンルも、2000年代後半~2010年代に登場するものは多くが同じようなコンテンツを消費するだけの似たようなゲームだらけになってしまったわけだ。
それだけではない。
他の大勢のプレイヤーと遊ぶことそのものが魅力だったMMORPGだが、2000年代後半にはオンラインプレイはごく当たり前になり、もはやその特別な魅力が薄れてしまったのも要因の一つだろう。
他のプレイヤーと遊ぶということが魅力でなくなったら、MMORPGに残っているのは小学生レベルのゲームプレイだけだ。
また、WoWをはじめとした「テーマパーク型MMORPG」は、便利さを追求したあまりプレイヤーコミュニティが活性しづらい構造になってしまい、MMOではないジャンルのオンラインゲームの方がむしろコミュニティ性が高いと思えるような状況に陥ってしまった。
特に、MMORPGの魅力は他のプレイヤーと交流できることであるという部分を開発会社が履き違えてしまい、パーティの強制やインスタンスダンジョンの繰り返しのような不要なものを次々に増やしていったのも衰退に一役買ってしまった。
昔のMMORPGはレベル上げやアイテム獲得の過程をひたすら長くすることで時間稼ぎをしていた。しかし、そういったものは飽きるということからインスタンスダンジョンでギミックを多く取り入れたMMORPGが増えたわけだが、グラフィックス関連で開発に時間かかるということもあり、結果としてコンテンツ不足であったり、MMOらしさの欠如といった副次的な問題を生んでしまうことになった。
日本や韓国、中国に限定すれば、オンラインゲームの運営会社があまりにお粗末なサービスをするということも深刻だったはずだ。蔓延るBOTに一生BANされない業者、チーター、不安定なサーバー、GMとユーザーの癒着などなど。
MMOに取って代わったオンラインゲームのジャンル
MMORPGが衰退しても、オンラインゲームが衰退することはなかった。
FPSのマルチプレイはもちろん、「リーグ・オブ・レジェンズ」「DOTA 2」のような対戦型のゲームが人気を博し、さらには「マインクラフト」のようなサンドボックスゲームが再び日の目を見ることになった。
▼マインクラフト
また、デモンズソウルやダークソウルのような、「ゆるい繋がり」を持ったゲームも近年になって増え始めた。
新しい時代のMMORPGに必要なもの
MMORPGのジャンルは衰退しつつあるが、新たな挑戦をするMMOが登場し始めている。
ARMA IIのMODから派生した「DayZ」はサバイバルMMOというジャンルに火をつけ、「Rust」「H1Z1」といったタイトルも後を追って登場している。
また、「The Division」や「Destiny」といったFPS・TPSジャンルとオンラインRPGを融合したようなゲームも登場している。
EverQuest Next, メイプルストーリー2、ペリア・クロニクルズといったMMORPGではサンドボックス要素を強調し、ユーザーが作ったものがそのままコンテンツの一部になるという循環構造を取っている。
しかし、ファンタジーMMORPGを今後成功させたいのであれば、正真正銘の革新が必要だ。その上でゲームを丁寧に仕上げなければならない。それでもこのジャンルに挑戦するというのはリスクを考えると難しい。
World of Warcraftからはもう10年が経過している。しかし未だにどのMMORPGもWoWを抜くことはできなかった。
2014年以降にWoWのアイデアばかりを借りたゲームがWoWを超えるほど成功するわけがない。
WoWの発売された2004年のさらに10年前は1994年。スーパーファミコンの時代だ。それを考えると未だにWoWのクローンを作ることがどれだけ愚かかというのがよくわかるはずだ。
ほとんどの要素が「Things To Do」ではなく「Things We Want To Do」にならなければ、MMORPGの未来はないだろう。
MMORPGのジャンルが衰退した理由は、
World of Warcraftが他のMMORPGを寄せ付けないほど成功し、他のメーカーが真似ばかりをするようになったこと、オンラインゲームが特別なものではなくなり、MMORPGでなくとも他の大勢のプレイヤーと遊べるようになったこと、他のたくさんのプレイヤーたちと同じ世界で遊ぶというMMORPGの楽しさの本質を見失ったコンテンツが多く作られてしまったことなどが挙げられるのだろう。
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