MMORPG『ロストアーク』ディレクターが語った新人時代の経験談。「活発なコミュニティのあるゲームが羨ましかった」

MMORPG「ロストアーク」のクム・ガンソンディレクター(40)が、健康上の理由で退任することが決まったが、ロストアークの開発理念に繋がる新人時代の経験談を語っていたので紹介する。

クム・ガンソン ロストアークディレクター:
私は20年間、ゲームを作ってきましたが、初めてゲームの開発に携わったのは20年前のことでした。「Vastian」という名前の俯瞰視点のゲームで、あまり人気がありませんでした。

vastiangameplay.jpg
MMORPG「Vastian」

私は面接で採用され、素晴らしい同僚や上司達と共に働くことになりました。彼が私の初めての上司でしたが、今でもまだ連絡を取り合っています。

当時、私は単なるゲームオタクの1人でした。どういうわけか、自分はゲームクリエイターになるべきだと考えるようになり、開発会社の求人に応募したんです。そうしたら、なぜか会社が私を採用してくれました。

入社当時の私にはアイデアがたくさんあり、そのアイデアをゲームに実装すれば上手くいくだろうと思いながら会社に行きました。

私の上司は非常に理解のある人で、傲慢な若造だったこの私にゲームデザインの基礎や、開発者が知っておかなければならないあらゆる事を一歩一歩教えてくれました。

その当時は人手が足りなかったので、小さなゲーム会社のゲームデザイン部門はサウンドから映像編集まで、あらゆることをこなさなければなりませんでした。

ゲーム開発の現実を経験し、もっと謙虚になるべきだと学びました。自分が本当に何も知らなかったことに徐々に気づきました。

当時、我々のゲームのユーザー数は7000人程度で、少ないと3000人くらいにまで減りました。

ユーザーが少ないゲームでは皆が家族のようになります。
ログインして周りを見渡すと、昨日も会った人ばかりです。プレイヤーもGMも皆、お互いのことをよく知っています。

大きな成功を収めることができなかったゲームでは、このような「家族」の雰囲気が形成されがちです。必ずしも悪いことではありません。「野郎ども、全員集合!」みたいな感じで。

しかし、そういったゲームでは「MMORPGの魅力」を感じることができません。

私は自分が作ったゲームはプレイせずに、ラグナロクオンラインばかりプレイしていましたね。

ラグナロクオンラインにログインすると首都プロンテラの市場には大勢の人がいましたし、Ragnagateと呼ばれる巨大なコミュニティサイトがあり、セオリークラフト(※)が大量に投稿されていたり、アップデートに関するコメントが書き込まれていました。
※セオリークラフト(Theorycraft)・・・ゲームの仕組みを数学的に分析して攻略に役立てること

しかし、我々のゲームはどうだったかというと、たまに励ましのコメントがあり、他にスパムコメントが何件かあった程度でした。私は、自分達のゲームの問題点を見つけ出そうとして途方に暮れてしまったのを覚えています。

我々は中国のパブリッシャーと契約することになり、Vastianの中国サービスのためにローカライズをしなければなりませんでした。
CEOだったかディレクターだったか忘れましたが、誰かから「韓国サービスの問題点を解決しましょう。そして中国サービスのローンチを成功させましょう。」と言われたのですが、韓国サービスの問題点をどうやって見つけ出せばいいのかわからないということに気づきました。

我々のコミュニティサイトにはゲームに対する意見もフィードバックも全くありませんでした。「このゲームは楽しいよ」くらいのことしか言われていませんでした。人が減ってもVastianをプレイし続けてくれていた人達なのでもちろんそう言いますよね。

コミュニティのフィードバックが欠けていたのを非常にもどかしく感じました。他のゲームのコミュニティではクラスのバランスなどでユーザーが議論を交わしている一方で、我々のコミュニティには何もありませんでした。だからどこを直せばいいのかわかりませんでした。

私は、活発なコミュニティのあるゲームが羨ましかったです。当時で言えば、MU、ラグナロクオンライン、リネージュなどがありました。リネージュ2もあったかも。

大きなコミュニティがあるおかげで、そういったゲームは素晴らしかったです。フィードバックが何でもいいから欲しかった。そんな時がありました。これが、私がフィードバック一つ一つを大切にする理由です。過去の経験があったからです。

裏話ですが、ロストアークのキャラクター「カダン」が持っている剣は、20年前に「Vastian」に存在した剣がモデルになっています。

そういった苦労を経験していると、小さな事に感謝するようになります。我々に送られてくるフィードバック1つ1つに。

ロストアーク開発の精神が「小さな奇跡を起こそう」なのは、それが理由です。

ロストアークは現在、かなりの収益があり、同時接続者数も多く、良い状況にあると言えますが、私の望みは十分なプレイヤー数を維持することです。それと、プレイヤーがコミュニティサイトで我々にフィードバックをくれることもです。どんなフィードバックでも歓迎しますよ、たとえボロクソに書かれても。

ゲームは今どんな感じか、どこかに問題があるか、パッチに問題はなかったか、そして、我々が将来のアップデートに向けた情報を発信した際に、プレイヤーをゲームの将来に興奮させることが十分できているかどうかなど。

夢がないように聞こえるかもしれませんが、我々が夢を実現させるために追求しているのはささやかでシンプルな事なのだと思います。小さな奇跡を起こすために。

そして、小さな奇跡が集まれば、大きな奇跡が起こります。欧米で有意義なローンチを達成できたことに感謝しています。しかし、まだ欧米サービスでどれだけの人数を維持できるのかはわかりませんので、これは我々にとって実現していない大きな奇跡です。そのために、謙虚な姿勢を忘れずに絶えず前進し、小さな奇跡を目指します。だから私達は毎日仕事をしています。

新しく発表した内容に騒いでくれたり、盛り上がってくれるのを見て、長期的にいくらかのプレイヤーを維持できそうだと思うことができます。毎回、そういった方々がとてもありがたいです。

皆さんがフォーラムに書いてくれる批判や励ましの言葉も、私達にとっては全てが奇跡のようなものです。そのおかげでここまで来れました。だから私達は、自分達だけで一日中話し合うのではなく、これまでやってきた事を今後も続けて、さらに前に進みます。

英訳:Finwe via Reddit

コメント

PR
タイトルとURLをコピーしました