WoWとFF14 なぜ『レイド』で差がついたのか?

2020年の年の瀬、奇しくも「World of Warcraft」と「ファイナルファンタジーXIV」というMMORPGを代表するタイトル両方で、高難易度のレイドが実装され、各々のワールドファーストレースが行われた。

MMORPGのレイドでは、どのチームが最速でコンテンツをクリアするのかという「ワールドファーストレース」が行われることがある。
WoWでもFF14でもワールドファーストレースが行われているが、そこで見えたレイドの「差」について本稿で紹介する。

ワールドファースト(世界最速攻略)までの日数

FF14

絶アレキサンダー討滅戦・・・約4日
希望の園エデン零式:再生編・・・2日未満

▼希望の園エデン零式:再生編 4層 世界最速攻略映像

World of Warcraft

Castle Nathria (Mythic)・・・約8日半

※実装後13日で2つのチームしか攻略に成功していない
※欧米だけでなく、中国やロシア、韓国などのチームもワールドファーストレースに参加している

▼「Castle Nathria (Mythic)」のラスボス世界最速攻略映像

「WoWのレイドはボスの数が多いから時間がかかる」という理由は反論としては通用しないと思われる。

WoWのレイド「Castle Nathria」には10体のボスがいるが、多くの攻略チームは残り3体に苦戦した。7体目まではあっという間に攻略されていたのだ。
ラスト3体のボスは最速でも1体あたり攻略に2日以上を要しており、これら3体のボスを倒すのには6日以上かかったことになる。世界3位のチームは9番目のボスを倒すのに1週間かかっている。

一方でFF14のエデン再生編零式は4体のボス合計で2日以内に最速で攻略されている。

FF14の「絶」に関しては、戦闘としては1戦のみで構成されているが、実質的には1つの中に複数のボスとの戦闘を組み込んでいる。

レイド攻略過程の”生配信”

さらに、決定的な差は「配信」である。

FF14の場合、最速攻略を目指したトップチームは零式でも絶でもほとんどが生配信を行っていなかった。

一方、WoWはワールドファーストのComplexity Limitと2位のEchoが両者共にTwitchで攻略の過程を配信していた。
後続は配信を見て、先に成功したチームの攻略法を「トレース」することが可能である。
しかし、それでも12月28日時点でラスボスを倒せたのは2チーム、9番目のボスを倒せたのは4チームしかいなかった。

昨今のファイナルファンタジーXIVのレイドは、攻略法がわかってしまうとトッププレイヤーならすぐにクリアすることができてしまう。
そのため、ある段階までは攻略動画を公開しないのが慣わしとなっている。自力で攻略しようとしているパーティへの配慮であることはもちろん、生配信してしまうと自分達の最速クリア達成が脅かされてしまう可能性もあるからだ。

WoWの場合、生配信して攻略法がバレたとしてもそれをトレースすることは簡単ではなく、最速クリアを目指すチームも大勢が配信を行っており、視聴者は「最速クリアの瞬間」を生で見ることができる。

▼攻略の生配信を告知するツイート

WoWの方がレイドの最速攻略までの時間が長いというのは、単にコンテンツが難しいという事を示すだけにとどまらない。
攻略が難しい方がTwitch等を中心にワールドファーストレースの企画が長く盛り上がるからである。
トップチームの配信には企業スポンサーがついており、eスポーツとしての盛り上がりも欠かしていない。今回WoWのレイドで世界最速だったLimitは、Complexity Gamingというeスポーツチームに所属している。

スポンサーからしても、2日で終わってしまうレイドよりも、ワールドファーストレースの企画が長く盛り上がってくれていた方が嬉しいわけだ。
Twitchの「World of Warcraft」カテゴリはレイドレース開始後に同時視聴者数が100万人近くまで膨れ上がり、最速クリアが出るまで高い視聴者数を維持した。

差がついた理由

ファイナルファンタジーXIVのレイドは、ワールドファーストを狙うような人には歯ごたえを感じさせ、トレースして攻略する人にはそれほど難しく感じさせないような設計になっている。

FF14の戦闘システムは親切設計を重視するあまり、年々かなりシステマチックになっており、戦闘の仕組み自体は簡単になっている傾向がある。そのため、複雑なギミックでレイドの高難易度を演出しているのだが、そのせいで「運動会」や「脳トレ」などと言われてしまうことも少なくない。
レイド自体がパズルゲームのようになっている節がある。パズルの答えを知っていたらあとはその通りに動かすだけの作業である。

FF14でもレイドの攻略レースは行われているが、最速候補のチームは決して生配信することがない。
なぜなら、ギミックの解き方さえわかればトッププレイヤーにとってクリアは難しくない設計であるため、生配信してしまうと明らかにレースとしては不利になるからである。
しかし、WoWはトップチームが配信をしていても、レースとして成立する難易度と量が提供されており、それがレイドのコミュニティ自体を盛り上げている。

15年以上前のMMORPGがなぜ未だに頂点に君臨するのか、その理由の一旦をレイドにも垣間見たように思える。

FF14の感想で、「ストーリーが面白い」「音楽が良い」「装備のデザインが良い」「多彩なコンテンツがある」というのはよく耳にするが、「レイドが楽しいゲーム」という声はあまり聞かない。果たしてFF14は次の拡張パック後も今と同じようなレイドを続けるのか注目したい。

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