ArenaNetが開発したMMORPG「Guild Wars 2」の正式サービスの開始から8月28日で5周年となった。9月には新たな拡張パック「Path of Fire」も発売されるが、なぜギルドウォーズ2は特別なMMORPGなのか、5つの理由を紹介する。

筆者の主観的な意見からすれば、「ギルドウォーズ2」はテーマパーク型MMORPGの”究極形”だ。MMORPGプレイヤーがGW2よりも前のゲームで挙げていた多くの不満点をことごとく解消するという離れ業をやってのけたからだ。
ギルドウォーズ2がMMORPGジャンルにもたらし、そして後のゲームに大きな影響も与えた5つの要素を紹介する。
レベルキャップを80のまま引き上げない
オンラインRPGと言えば、最大レベルがアップデートによって引き上げられるというのが常識と言っていいほどだ。
しかし、ギルドウォーズ2を開発したArenaNetはこれを真っ向から否定した。
レベルキャップはサービス開始時も、そして今もずっと80のままだ。
代わりに、レベル80になってから遊びの幅を縦ではなく横に広げるということをずっとしてきた。
多くのMMORPGにおいてレベルキャップが開放されると、それまでのどんなに貴重な装備でも、あっと言う間に通過点の一つになってしまいがちだ。せっかく愛着のわいた装備も無用の長物と化してしまう。
オンラインRPGにおいて、スキルが増えることには意味があるが、レベルの上昇と高いレベルの装備でHPや攻撃力が上がることには実はあまり意味がない。結局、レベルが上がれば、そのレベルに合わせたバランスのコンテンツが作られるからだ。
いわゆるアイテムレベルにも同様の事が言える。高いアイテムレベルに合わせたコンテンツを実装しなければならなくなる。
レベルと装備の恩恵が本当にあるのは、フィールドでのPvPや装備の影響が出るPvPコンテンツくらいだろう。
かつて「TERA」のディレクターは、最大レベルの上昇や高アイテムレベルの装備の実装がアップデートの度に積み重なっていく状況について、”新規プレイヤーが登るのを諦めてしまう高すぎる塔”だと表現した。
ギルドウォーズ2はレベル80の装備の間でも、レア度による能力差はかなり小さく設定されている。
また、レベル80になった後でも、スペシャリゼーションやマスタリー等によって遊びの幅が増えていく。
さらにレベル80であっても、マップに入っただけで自動的にレベルやステータスが調整されるスケーリングによって、どんなレベル帯のコンテンツでも本来の難易度で楽しむことができる。
生きた世界とダイナミックイベント
ギルドウォーズ2の世界構築は圧巻の一言だ。NPC達の暮らしが感じられ、探索したくなる要素がふんだんに、そして丁寧に盛り込まれている。都市一つとっても広大で活気に満ち溢れ、様々な場所を訪れたくなる。
そして、クエストや狩りではなく、「ダイナミックイベント」を主軸に据えているのが最大の功績だろう。
ギルドウォーズ2には、他のMMORPGのようなクエストは存在しない。
ダイナミックイベントはギルドウォーズ2のマップ上で自然発生する様々なイベントだ。
例えば、敵が集落にやってきて、NPCが誘拐されてしまい、そのNPCを助けに敵の本拠地に乗り込むというようなものだったり、ワールドボスが複数の段階を経てフィールドに出現し、大勢のプレイヤーが協力して倒すというようなものだ。
FF14のFATEはこれに似ているが、ギルドウォーズ2と比べるとやや作業的で一つ一つのストーリー性やダイナミックさ、演出に欠ける。
先述のように、レベルスケーリングがあるので、低レベル帯のマップのイベントでも高レベルのプレイヤーがやってきてダイナミックイベントに参加している姿も多く見受けられる。
ダイナミックイベントによっては100人以上のプレイヤーが巨大なドラゴンと戦うような壮観なものもあったりする。
ギルドウォーズ2ではこのダイナミックイベントのおかげで、作業的な狩りやクエストをすることなくカジュアルにレベルを上げていくことができる。徹底的に反復的で作業的なゲームプレイを避けている。
ダイナミックイベントに加えて、ギルドウォーズ2の”世界が生きている”感覚というのを強く感じることができる。
ギルドウォーズ2はLiving Worldアップデートを長きに渡り実施してきた。
このアップデートでは、ストーリーの流れによって世界そのものが姿を変えてしまうようなことも起こる。
その最たるは、中心的な都市であるLion’s Archの変化だ。
Lion’s Archは多くのプレイヤーが集う都市だったが、あるLiving Worldアップデートのストーリーの中で、破壊されてしまう。そしてそこにいたNPCたちは近くの砦へと避難することになった。
しばらくの間、Lion’s Archの街が廃墟となってしまったのだ。
しかし、後のLiving Worldのストーリーで街の復興が徐々に進み、今では以前とは少し姿を変えて街が復活している。
これにはフェージングを利用していない。つまり全てのプレイヤーにとって同じように進行した世界の変化だ。
こういった全てのプレイヤーとそしてワールド全体に影響するようなことにストーリー性をもたせた上で継続的にやったというのは異例だった。
また、ギルドウォーズ2の世界には随所にジャンピングパズルと呼ばれるものがあり、探索をしてこれを解く楽しみもある。ジャンピングパズルといってもかなりのスケールのものも用意されている。
さらに、ギルドウォーズ2のフィールドマップはデータセンター単位で共有され、臨機応変に人数が調整されている。
つまり、人が少ないマップであったとしても多数のサーバーのプレイヤーが同時に入場しているため、MMORPG特有の過疎の問題が少ない。
パーティプレイを強制しない・ロールの排除
ギルドウォーズ2にはインスタンスダンジョンやレイドもあるが、全く強制しない。やらなくても一切問題ない。
メインストーリーは完全な1人用のコンテンツになっている。
さらに、いわゆるタンク・ヒーラー・アタッカー(ダメージディーラー)・サポートというような役割は存在せず、全てのキャラクターが自己ヒールスキルや回避を使うことができる。
しかし、パーティプレイを強制していないにも関わらず、フィールドでのダイナミックイベントのおかげで他のプレイヤーとの協力を気軽に楽しむことができる。MMORPGらしく見知らぬ人との協力ができるというわけだ。

一方で、高難易度のコンテンツを楽しみたいのならインスタンスダンジョンやレイドにパーティメンバーを募って乗り込むこともできる。ただし、ロールがないのでメンバー集めもずっと楽だ。
ダイナミックイベントによるフィールドコンテンツの充実と、強制ではないインスタンスコンテンツ、さらにはWorld vs. Worldのような大規模PvPにより、友達やギルドの仲間とのMMORPGらしい遊びを気軽にすることができる。当初はなかったギルドホールも後の拡張パックで実装された。
また、グループでのPvPはサービス当初から専用装備だけで戦うように作られており、装備差による有利不利が生じなかった。この方式はFF14やTERAも導入した。さらに、PvPからレベルの概念を消すことで、PvPだけを楽しみたい人にも親切な仕様だった。
色褪せない傑出したアートディレクション
ギルドウォーズ2は単純なグラフィックスのレベルだけではなく、そのコンセプトが非常に優れている。
2012年のゲームだが、今プレイしたとしてもギルドウォーズ2の世界の美しさはMMOの中で抜きん出ている。ギルドウォーズ2の世界の美しさが存分に引き立てられている。
どこか絵画のような雰囲気もあったり、独特だがしっくりくるビジュアルで、当時のアートディレクターはずば抜けた才能を持っていたのだろう。
また、キャラクターの見た目に関しても洋ゲー特有の大味さはほとんどない。
ギルドウォーズ2のようなグラフィックスのMMORPGは他に類を見ない。単純にグラフィックスレベルという観点からはギルドウォーズ2よりも優れたMMORPGは後にいくつも登場しているが、見た目の美しさ・綺麗さという観点ではギルドウォーズ2はトップクラスだ。特に水中の美しさが際立っている。
世界に溶け込んだユーザーインターフェイス
ほとんどのMMORPGのユーザーインターフェイスやHUDはかなりシステマティックだ。自ら「UIです」と主張しているようなものだ。
一方でギルドウォーズ2のユーザーインターフェイスはゲームの世界観に自然に溶け込むように作られている。ユーザーインターフェイスのデザインとそこに加えられているエフェクトは本当に優れていて美しさすらある。それでいて尚且つ使いやすい。
ファンタジーにはファンタジーらしいUIが必要だという開発者の素晴らしい創意工夫を感じ取ることができる。
FF14リードUIアーティストの皆川氏も、UIが印象に残ったゲームの一つにギルドウォーズ2を挙げている。

コンテンツという観点からだとギルドウォーズ2は超長期的にプレイするゲームではないかもしれないし、完全無欠のゲームというわけでもないが、たまに戻って来たくなるようなゲームだ。昔は購入必須だったが、今は基本プレイ無料化している。
筆者個人的には、WoW以上に日本語版がなかった事が惜しいMMORPGだった。また、多くの人に一度でいいからこのゲームを少しだけでも体験してほしかったと思う。特に他のMMORPGで嫌気が差してそれ以来プレイしていないという人。
最後に、今から8年前、最初に公開されたギルドウォーズ2のティザートレーラーを紹介して終わりとする。


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