オンラインRPGから魅力を奪っているかもしれない親切すぎるシステム

MMORPGに当然のように実装されているシステムが良い面だけでなく悪い面も持ち合わせており、本当にそのゲームに適切な仕組みで導入されているのかどうかはわかりづらい。

また、こういった便利なシステムを実装する必要があるゲーム全体の設計を考える機会も少ないが、本稿ではMMORPGでよく見かけるが、見方によっては魅力の一部を奪っているかもしれないものを紹介する。

ファストトラベル/テレポート

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今やこれがないMMORPGを探すほうが大変だが、ウェイポイントがたくさんありすぎるとリアリティの面で馬鹿馬鹿しく感じることだけでなく、ゲームへの没入感を阻害することにもなる。

村から村へ、あるいは都市から前線基地というような移動はファストトラベルがないと不便に感じるかもしれないが、同じエリアの中に10も20もウェイポイントが設定されていると、MMORPGのマップが広い意味は何なのか考えさせられてしまう。

都市や拠点となる施設からプレイヤーが各々の目的地へと出かけていく姿はオンラインRPGならではの風景だ。

あちらこちらにウェイポイントが設置されているようなファストトラベルは無くてはならないものだと思われがちだが、それはゲームのデザイン次第ではないだろうか。

移動を楽にするシステムでも、一瞬で移動するテレポートなのか、徒歩やマウントでの移動よりは速いがある程度の移動時間が存在するようなもの(列車、飛行機、鳥?、船など)ではその意味も若干変わってくる。

簡単に手に入る”レア”装備

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雑魚モンスターからいともたやすくドロップする装備が本当に「レア」なのだろうか?

近年のMMORPGでは「戦利品が全て」というような風潮の中で、プレイヤーは簡単に手に入る強力な装備やその時一番強い装備を目指して行動し、その装備が入手できることもある程度保証されている。

古いMMORPGでは本当にごく一部のプレイヤーしか持っていない装備があったりしたが、当然そういったシステムに不満の声をあげる人も多かった。

こういった不満への妥協案として誰もがほぼ公平にレアな装備を入手できるようになったが、結果としてプレイヤーの装備の多様性が失われ、レア装備を持っているのが当たり前であり、ゲームそのものが無味乾燥で退屈なものになってしまうこともあった。

特にカンストするまでの区間では簡単に強力な装備が入手でき、その装備があれば特に苦戦する敵もおらず、あっという間にエンドゲームに到達するが、これがもしMMORPGの初心者であれば、カンストしたら突然ゲームが著しく難しくなったと感じるかもしれない。

取引所/委託販売/オークションハウス

ゲームによってはわざわざNPCところに行って話しかけなくても利用できる取引所・委託販売所・オークションの機能。
登録しておけば誰かが見つけて買ってくれるし、直接プレイヤーに会って取引を行う手間も省ける。登録したNPCがいる町の外でもどこかで購入したらAmazonもビックリの速さで瞬時に配達される。

さらに、アイテムの相場もわかるので非常に便利でこれがないと困る人も多そうだが、こういった取引所の機能はプレイヤー間の取引や個人商店、露店といったシステムを不要にし、プレイヤーが交流する機会を減らしているという側面もある。

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MMORPGのイメージとしてはありそうなのに、システム上の様々な制約によって実際にはほとんど見かけないのがプレイヤーが運営している商店や鍛冶屋などの本当に「ロールプレイング」らしい要素だ。
都市の一角が市場と化していてプレイヤーの商店が設置されたり、プレイヤー同士の取引が活発に行われる場所・・・というのは委託販売があれば不要になる。

しかし、委託販売やオークションハウスがなければないで不満が続出するので結局実装されことになるのだが。

過度な誘導と説明

これは昨今のMMORPGのコンテンツの設計が原因ではあるが、未知のものに挑戦する、未知のものを探索し発見するという要素が圧倒的に欠如している。

近年のMMORPGのほとんどはスタティック(静的)であるため、アップデートで変更されるまでは、どこに行くと何があるのか、ボスの攻略法、欲しいアイテムの入手方法、クエスト位置など、ほぼ全ての情報は一度でもプレイヤーが見つければ攻略サイトやwiki、YouTubeに掲載されている。
それどころかゲーム側でクエストの攻略に必要な敵の位置まで懇切丁寧に教えてくれる。

ゲーム側で「プレイヤーがすべきこと」を提示し、プレイヤーを導いてくれるのはゲームの敷居を下げてアクセシビリティを向上させることに貢献しているが、プレイヤーが動機ではなく指示に基いて行動することに繋がっており、あっという間にモチベーションが低下する懸念もある。

解き明かされていない謎が残っていることや、プレイヤーが予測できないものが存在すること、わかっていてもそれを達成するのは難しいことは存外にゲームの魅力の一つだと言えるが、それはここ何年もの間MMORPGで失われている要素でもある。
言葉を変えれば、近年のMMORPGはそれだけ開発者が意図したようにプレイヤーを誘導するように作られているということだ。

結論

結局のところ、そのゲームのデザインとの折り合いが全てではあるが、便利だという理由で実装されているシステムがMMORPGの魅力を犠牲にしている場合もあり、MMORPGのジャンルで当たり前になっているシステムが必ずしもそのゲームにとって正解とは限らないということをもう一度考える必要があるのかもしれない。便利になったがゆえに失われたものもあるというのは現実の世界にも通じるところだろう。

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