miHoYo (HoYoverse)のターン制RPG「崩壊: スターレイル」(PC/iOS/Android)のファイナルクローズドベータテストのレビュー
総評
- 全体的に非常に高品質
- SFとファンタジーが融合した壮大な世界観
- フィールドではカメラを自由に動かせる
- 会話シーンが全て3D(2D立ち絵での会話でない)
- 作り込まれた街やフィールド
- 敵とのエンカウントを有利にできるアクション
- 適度な難易度の謎解き要素
- 日本語にもリップシンクされている
- フルボイスで大ボリュームのメインクエスト
- 世界設定を深掘りできる膨大な数の書物
- モブのNPCにも会話で色々聞ける
- 見やすく、レスポンスが速いユーザーインターフェイス
- PCでの動作が非常に軽く、ロードも速い
- PCでの操作にも最適化されている
- シンプルな育成システム
- 会話から戦闘に至るまで洗練されたモーション
- 物語性のあるサブクエスト
- 一部のコンテンツでは「サポート」として他のプレイヤーのキャラクターを借りることができる
- 主要なキャラクターがNPCとして配置されている
- シュールで趣のある一部のテキスト
- 多くの場合、会話の選択肢にネタ返答が一つある
- どこでも合成(クラフト)が可能
- ★4キャラにも十分な戦力がある
- いくらか良心的なガチャ
- ビルドがガチャによって左右される
- クエストが冗長に感じられる事がある
- 主人公が超然としており、印象が薄く感じる時がある
- ターン制のゲームとしては各キャラのスキル数が少ない
- 育成によって新しいスキルを覚えるわけではない
- 必殺技の演出をスキップできない
- メインクエストは開拓レベルによって制限される
- スタミナによって育成が制限されている
- 開拓レベルによって育成が制限される
- 開拓レベルを上げるためにサブクエストをこなすのは苦行
- キャラクターと比べると、背景のテクスチャ解像度は明らかに低い
ファイナルCBT 感想
miHoYo(HoYoverse)の最新作「崩壊:スターレイル」はスマートフォンゲームとしてはおそらくトップクラスのクオリティに仕上がっている。基本プレイ無料にも関わらず、一昔前の1本6000円のJRPGくらいの内容と品質は十分に備えており、「原神」に続いて再びゲーマーを驚かせるポテンシャルは十分にある。しかし、このゲームはストーリー的にもシステム的にも原神より人を選ぶような印象を受けた。
アクション戦闘と比べて、ターン制の戦闘は爽快感に欠け、作業的になりやすいことに加えて、家庭用ゲームのターン制RPGと比べると、崩壊スターレイルは成長によってキャラクターのスキルが増えないため、戦略的な奥深さや成長の楽しさがあまり感じられない。
また、崩壊スターレイルはクエストへの比重が高く、ストーリーを重視している人や、テキストを読むのが好きな人でないとダルく感じるかもしれない。本作はオープンワールドゲームではないため、クエストの合間に息抜きとして戦闘や探索をするにしても限度がある。
崩壊スターレイルの「列車に乗って星を巡る物語」には独特な魅力があり、フルプライスのゲームのようなリッチな体験が可能だが、プレイヤーが最初に訪れることになる「ヤリーロVI」におけるメインクエストはおそらく好みが分かれるだろう。ボリュームは十分だが、クエストの長さの割に展開に乏しく、冗長に感じられることが何度かあった。
モバイルゲームの観点で言えば、自動化も可能なターン制戦闘はスマートフォンのような環境に適しており、アクションが苦手な人やアクション戦闘に興味がない人にも訴求することができる。このクオリティのゲームをスマートフォンで、なおかつ無料でプレイできること自体驚くべきことだ。
miHoYoは「原神」「崩壊スターレイル」「ゼンレスゾーンゼロ」の3タイトルで異なる需要を満たそうと考えている。崩壊スターレイルはターン制RPG、ゼンレスゾーンゼロはアクションゲーム、原神はオープンワールドRPG。本作の育成システムの基本は「原神」を踏襲したものになっており、原神を遊んだことがある人なら、崩壊スターレイルのシステムもすぐに理解できるように設計されている。ガチャもほとんど同じ仕組みだ。
現時点で本作の正式サービスの開始日時は不明だが、既に事前登録は開始されている。先述のように、原神ほど多くの人に受け入れられるゲームではないが、ターン制の戦闘とガチャに抵抗がなければ一度プレイしてみるのを強くおすすめできる。そう言えるほど、崩壊スターレイルは洗練された高いクオリティのゲームだ。
詳細
崩壊スターレイルの詳しい感想について以下で紹介する。
メインストーリー/演出
崩壊スターレイルのストーリーはメインクエストに添う形になっている。基本的に特定のキャラクターと会話をしたり、指定された場所に行ったり、敵を倒したり、仕掛けを解いたり等して進行する。
メインクエストの進行は必須であり、メインクエストを進めないと解放されないコンテンツもある。
会話演出は現在のモバイルゲーム市場の他のRPGと比較しても群を抜いて豪華であり、メインストーリーにおける台詞はフルボイスで、3Dのキャラクターに細かなアニメーションがつけられている。日本語に合わせたリップシンクがされており、ボイスと口の動きが一致している。
会話シーンにおけるカメラアングルも一辺倒ではなく、引いたり寄ったり、建物や遠景を映してみたり、あえて喋ってるキャラクターからピントを外してみたりと、演出面で様々な工夫が見られる。
会話シーンにおいて、キャラクターの目が動いたり、喋っていないキャラクターも会話に合わせて表情を変えたりと、芸が細かい。
これ以外にはカットシーン(ムービー)の挿入や、2Dイラストを使った演出があったりと、メインストーリーへの力の入れようには目を見張るものがある
あまり喋らないタイプの主人公
本作の主人公は会話の選択肢以外ではほとんど喋ることがない。
ペルソナシリーズの主人公や原神の主人公と同じだが、ペルソナ5のモルガナや原神のパイモンのように、口数少ない主人公の代わりに意見を代弁してくれるキャラクターが崩壊スターレイルにはいない。物語の展開的に他のキャラクターが同行することもあるが、本質的には異なる。
この点はメインサブ問わずストーリーの面白さにマイナスの影響を与えてしまっているのかもしれない。
フィールド/街/探索
崩壊スターレイルにはフィールドマップが存在する。ペルソナシリーズやテイルズシリーズがこれに近いと言える。
「フィールド」という表現を使ったが、崩壊スターレイルではプレイヤーは常に自由に移動可能な空間におり、宝箱を見つけたり、NPCと会話したり、謎解きをしたり、ゴミ箱を漁ったり、敵と戦ったりすることができる。崩壊3rdやソーシャルゲームによくあるロビーは存在しない。
街(セーフエリア)・星穹列車
崩壊スターレイルの街は明らかにスマートフォンRPGの水準を凌駕していると言っていいだろう。
街には商店や自販機もあり、アイテムや書物を買うことができる。ロードを挟むが、街からそのまま敵のいる探索エリアに移動することがきる。
訪れる場所によって文明の発達具合も異なっており、ヤリーロVIではスマートフォンのような電子機器はなく、惑星外からの来訪者がいるというのは作り話だと思われている一方で、仙舟のように宇宙船の上に都市があり人々が暮らしている場所もあるのが世界観的に面白い部分だ。
プレイヤーのホームとも言えるのが星穹列車。主人公は現地のホテルに泊まっている設定だが、列車には部屋があって、現地に降りていないキャラクターは列車に滞在している。また、クエストをクリアすると乗組員以外の他のキャラクターも列車に乗るようになる。
まさに銀河鉄道の如く、星穹列車で惑星や宇宙ステーション、宇宙船を転々として行くのが『崩壊スターレイル』の物語の中核だ。
それなりの大きさのモニターでプレイした場合、家具や建物に使われているテクスチャの粗さが気になる。スマホでプレイする分には気にならないと思われるが、PCだとこの粗さは目立つ。
戦闘
崩壊スターレイルの戦闘はシンプルで、味方キャラクターのターンが来たら、行動を選択して実行するだけだ。
通常攻撃かスキルを選ぶことができ、スキルを使うにはSP(スキルポイント)が必要となる。SPはパーティ全体で共有されており、通常攻撃を行うと回復し、上限は5ポイントまで。
必殺技
SPとは別に「EP」というリソースがあり、上記画像の左下のキャラクターのアイコンの横にある円がEPと必殺技を表している。
必殺技はキャラクターのターンに関係なく、EPさえ貯まっていればいつでも使うことができるため、必殺技をいつ使用するかが重要になる。必殺技は派手な演出があり、威力や効果も大きい。
▼必殺技をまとめた動画
この必殺技だが、演出をスキップすることができない。戦闘は2倍速にすることができるが、ボス戦では何度も必殺技の演出を見ることになるため、できればスキップ可能にしてほしところだ。
崩壊スターレイルの戦闘は2倍でちょうどいいくらいで、通常の速度だとあまりにもゆっくりでテンポが悪い。ただし、2倍だと敵の攻撃の合間に必殺技を使いたい場合に操作が少し忙しくなる。
靭性/撃破
崩壊スターレイルの戦闘システムには「靭性」と「撃破」というものがある。
敵のHPバーの上にある白色のゲージが「靭性」で、これがなくなると敵は「弱点撃破」と呼ばれるダウン状態になり、被ダメージがアップし、行動も遅延する。
靭性にダメージを与えるには、弱点の属性で攻撃する必要がある。それ以外で靭性にダメージを与えることはできない。したがって、敵の弱点属性のキャラクターがパーティにいることが望ましい。
敵には複数の弱点がある場合が多いため、何種類かの属性のキャラクターを編成しておけば、1人くらいは弱点属性で攻撃できる。
弱点攻撃・秘技
崩壊スターレイルの戦闘は、敵に攻撃アクションを当てるか、敵に攻撃されるかすると始まる。相手の弱点属性で攻撃すると、有利な状況で戦闘を開始できる。
崩壊スターレイルの戦闘の特徴の一つが「秘技」だ。
秘技はフィールドで使用することができるスキルで、戦闘開始後にバフ効果を得られるものや、相手にデバフを与えた状態で戦闘を始められたり、HPを回復したりなど様々な効果がある。
各キャラクター1種類の秘技を覚えている。
秘技を使用するには秘技ポイントが必要で、秘技ポイントはフィールドに設置されている専用のオブジェクトを破壊した際に獲得できる。
フィールドでの操作性はかなり良い。
育成要素
レベル・・・経験値素材アイテムを消費してレベルアップできる
光円錐・・・1キャラ1枚装備できるカード。HP・攻撃力・防御力が上がる。特殊効果も付いている。基本はガチャで入手できる
軌跡・・・スキルレベルの強化。追加効果も
遺物・・・防具。2セット効果や4セット効果がある。遺物は宝箱やNPC商店で入手できる
星魂・・・いわゆる凸。同一キャラクターを複数入手すると追加の能力を得られる
育成用素材や遺物を手に入れるためのコンテンツには「開拓力」を消費する。開拓力は本作におけるスタミナのことで、時間経過で回復し、最大は180。このため、無制限に素材や遺物を入手することはできないが、ガチャに使う石を消費することでスタミナの回復が可能である。
キャラクターの「属性」と「運命」
崩壊スターレイルのプレイアブルキャラクターは7種類の属性のいずれかを持っており、戦闘で使用するスキルは常にその属性となる。例えば炎属性のキャラクターが物理属性で攻撃することはない。
属性は敵の弱点と耐性の影響を受ける。
また、属性によって弱点撃破時に相手に付与できる効果が異なる。
炎・・・燃焼:持続ダメージを与える
風・・・:風化:持続ダメージを与える
雷・・・感電:持続ダメージを与える
氷・・・凍結:敵を行動不能にし、持続ダメージを与える
虚数・・・束縛:敵の行動を遅延させ、持続ダメージを与える
量子・・・もつれ:敵の行動を遅延させ、持続ダメージを与える
物理・・・裂創:持続ダメージを与える
プレイアブルキャラクターは「運命」と呼ばれるタイプに分けられており、そのキャラクターの特徴を示している。
具体的には次の通り
壊滅=アタッカー
巡狩=単体アタッカー
知恵=全体アタッカー
調和=バッファー
虚無=デバッファー
存護=シールド/タンク
豊穣=ヒーラー
また、装備アイテムの「光円錐」に付与されている効果は、特定の運命のキャラクターが装備した場合にのみ発動する。
なお、主人公はストーリーが進むと運命を切り替えられるようになる。
開拓レベル
今回のCBTで最もフラストレーションとなったのが開拓レベルだった。
開拓レベルはキャラクターのレベルとは別に存在する、「アカウントのレベル」のようなものだ。
クエストをクリアしたり、開拓力(スタミナ)を消費したり、宝箱を開けたりすることで開拓レベルの経験値である「マイレージ」を入手できる。
この開拓レベルが条件を満たさないと、メインクエストが進められなくなる。また、開拓レベルを上げないと、キャラクターレベルの上限を解放することもできない。
メインクエストだけでは開拓レベルは不足するため、サブクエストをやったり、デイリークエストをやったり、訓練と呼ばれるミッションのようなものをこなすなど、開拓レベル上げをすることになる。
スローペースでプレイする人であれば、毎日デイリー訓練とスタミナ消費をすれば、マイレージが貯まって開拓レベルは不足しないと思われるが、ハイペースでプレイする人は「開拓レベル上げ」が必要になるだろう。開拓レベルのためにサブクエストをこなすのは骨が折れる。本作のサブクエストはストーリー仕立てになっていて時間がかかる。
バトルコンテンツ
育成素材用のバトルコンテンツ以外に「忘却の庭」や「模擬宇宙」が高難易度コンテンツとして用意されている。
忘却の庭はステージ内の敵を全て倒すコンテンツで、登場する敵は定期的に更新される。挑戦目標が設定されており、原神の「深境螺旋」に似ている。
模擬宇宙はフィールドの一部を切り取ったようなダンジョンで、「祝福」と呼ばれる様々なバフを手に入れてパーティを強化しながら、敵を倒して先のエリアに進んで行くというもの。途中に休憩エリアがあったりする。
模擬宇宙はいくつもエリアがあり、忘却の庭より長い。そのため、途中で進行度をセーブしたまま中断し、後で中断した場所から再開することもできる。
模擬宇宙では報酬として遺物が得られるが、遺物を獲得する際に「開拓力(スタミナ)」が必要である。なお、模擬宇宙に挑戦するだけなら開拓力は消費しない。
ガチャ(跳躍)
当然ガチャが実装されている。本作では「跳躍」と呼ばれている。
今回のCBTでは、初心者ガチャ、キャラクターピックアップ、光円錐(装備)ピックアップ、恒常ガチャの4種類があった。
ガチャの仕組みは「原神」とほとんど似た仕組みだが、★4の出現確率は5.1%で原神よりも低い。★5キャラクターは0.6%
★5キャラクターの天井は90回に設定されている。★4は10回。
CBTの仕様では初心者ガチャを50回引くと★5キャラクターが確定で入手できるようになっていた。
原神にはない仕組みとして、300回ガチャを引くと、7人の★5キャラの中から好きなキャラクターを確定で入手することができる。
ちなみに、列車が重要なゲームだけあり、ガチャチケは文字通り「チケット(切符)」だった。
ガチャに関しては、確率の数字以上の渋さがある。原神はキャラクターを手に入れることで、新しい操作感やゲームプレイの体験そのものを拡張することができるが、崩壊スターレイルはターン制なのでキャラクターを手に入れてもゲームプレイの体験自体は同じで、戦略面や能力の拡張に過ぎない。
サポート機能で持ってないキャラを試せる
崩壊スターレイルの一部コンテンツでは、「サポート」として他のプレイヤーが保有しているキャラクターを借りてパーティに加えることができる。これにより、自分が持っていないキャラクターを実戦で試すことができる。
あるいは、自分が育てていないキャラクターをサポートで借りることで、そのキャラクターを育てるべきかの判断材料に使うこともできる。
メッセージ
崩壊スターレイルはSF作品ということもあり、登場人物達はスマートフォンやメッセージアプリのようなものを使用して連絡し合っている。プレイアブルキャラクターはスマートフォンを持っており、スマートフォンのカバーが一人一人異なる。
現代あるいは未来を舞台にしたRPGでは、スマートフォンのメッセージアプリが登場することはよくあるが、崩壊スターレイルはこのメッセージアプリの使い方が上手い。
メッセージをきっかけにクエストが発生したり、SNSでデマを広めた犯人を特定したり、変なグループがあったり、キャラクターの魅力を引き出すことに使っていたり、単に連絡や雑談に使っていたりと、思っていたよりも面白いものだった。普段ほとんど喋らない主人公の意見を読める貴重な場所でもある。
ネタ
崩壊スターレイルはさり気なく様々なギャグや小ネタが仕込まれている。
ベロブルグでの「ゴミ箱漁り」がその一つで、各所に置かれているゴミ箱一つ一つを調べた際に表示されるテキストが全て異なり、そのテキストもかなり味わい深い(?)ものになっている。下の画像はその一部。
崇高な行いをすると「崇高なる道徳の賞賛」を手に入れることができる。
噴水に投げ込まれたお金を拾ったり、他人の鞄を勝手に開けたりといった野暮な行動を取る際に「崇高なる道徳の賞賛」が必要となる。
この他にも会話の中で出てくる選択肢に、結構な頻度でおふざけ返事の選択肢が混ざっているなど、開発者の遊び心(?)が随所に散りばめられているようだ。
ファイナルクローズドベータテストはここまで。
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