3月20日に発売され、爆発的な人気を呼んだ「あつまれ どうぶつの森」だが、リアルマネートレードが横行していると国内メディアによって報じられた。
▼あつまれどうぶつの森のRMTを報じる記事
あつまれどうぶつの森はオンラインゲームではないが・・・
「あつまれ どうぶつの森」は、インターネットに接続せずともプレイできるゲームであり、プレイする際にサーバーの認証が必要になるわけではない。
オンラインゲームやソーシャルゲームの場合、プレイヤーのデータがサーバーにも保存され、プレイヤーのローカルデバイスに保存されたデータと整合性を取る。
「あつまれ どうぶつの森」はこれを行っていないからこそ、ニンテンドースイッチの本体時間を操作して、ゲームを先に進めるという荒業も可能となっている。
これがオンラインゲームなら、そんな事が可能ならすぐに不具合だとして修正され、運営はサーバーのデータをロールバックするだろう。
オンラインゲームやソーシャルゲームでは、データがサーバー上に保存され、他のプレイヤーとも必ず共有されるので、ある意味プレイヤーのデータが「運営によって認められている」と言えるのだ。
その価値が認められているからこそ、ユーザーは膨大な時間を費やし、課金アイテムを買ったりという行動に繋がり、不正ではあるがリアルマネートレードのような行為も蔓延ることになる。
では、なぜデータがローカルに保存されているだけで、オフラインでもプレイできる「あつまれ どうぶつの森」においてリアルマネートレードが横行するのだろうか。
制限されていない経済システム
「あつまれどうぶつの森」とそれをとりまく環境には、まるでMMORPGのような仮想の経済システムが作り出されている。これは開発者ではなく一部のプレイヤーが自発的に作り出したものだ。
最も優れた経済体系を持つと言われるMMORPG「EVE Online」の社内エコノミストは、次の3つがデジタル経済を機能させるために必要だと説明している。
ゲームのデジタル経済を機能させるために必要な要素
- 物を取引・交換できる機能
- 希少性
- 有用性やインセンティブ
「あつまれどうぶつの森」は見事にこの3つ全てが揃っている。
通常、ほとんどのオンラインゲームの経済は、ゲーム開発者によって厳しく制限されている。
スマートフォンゲームに至っては、プレイヤー同士のアイテム・キャラクターの取引機能自体を設けないことも多い。
一方、「あつまれどうぶつの森」は、プレイヤー同士の取引には全くと言っていいほど制限がない。
オンラインRPGでは、取引可能なアイテムと取引不可能なアイテムといった基準を設けることで、リアルマネートレードを防止する施策が数多く取り入れられている。
「あつまれどうぶつの森」がこういった制限を設けないのは、そもそも不特定多数のプレイヤーが参加するタイプのオンラインゲームではないので、開発設計上では「あつまれどうぶつの森」には経済システムが存在していないとされているからだろう。
しかし、有志が作成したNookazonのようなアイテム売買補助サイトは、ゲームの開発者の意図とは裏腹に、「あつまれどうぶつの森」に経済体系を発生させることになった。
RMTがオンラインゲームにもたらす負の面、ゲームバランスの崩壊、インフレ、ランキング等への影響、BOTやチートのような不正行為の蔓延は、基本的に不正利用者以外のプレイヤーにも悪影響がある。
「あつまれどうぶつの森」の場合、好きなキャラクターが島にいるかどうかや欲しい家具を持っているか、自分が持っているベルの金額は、他のプレイヤーに直接悪影響を与えることがない。あくまで自己満足で、それによって他人の島を滅ぼすわけでもない。
だからこそ、100%のオンラインゲームではないのにも関わらず、ユーザーがリアルマネートレードに手を出したくなるような強い要因が他に存在している。
SNSがどうぶつの森を「オンラインゲーム化」させた
その原因の一つは、ゲームに対するプレイヤーの感情がSNSの影響を受けていることにある。
大昔のように、ローカルマルチプレイに留まっているだけなら、おそらくRMTに手を出す人はほとんどいないだろう。
しかし、Twitterやインスタグラム、LINEといったSNSとどうぶつの森の相性が非常に良かったことで、多くの人がスクリーンショットやマイデザインを投稿し、オンライン専用ゲームでもMMOでもないのに、他人のプレイ状況がとても気になるという感情がプレイヤーに生まれている。
他のプレイヤーの持ち物や島の住人を羨ましく思う感情は、現実のお金を払ってでもどうぶつの森を充実させたいという欲求に繋がり、リアルマネートレードの需要を生んだと推測される。
自分の周囲の顔見知りの人々だけでなく、SNSで流れてくる赤の他人の情報は社会的な承認欲求を喚起させるのに十分だ。
また、SNSを通じて自分のゲームの状況を発信することができるため、オンラインゲームではないのに「あつまれどうぶつの森」がオンラインゲーム並のコミュニケーションツールへと昇華し、そこにあるデータに高い価値を感じる人が増えたというのも要因の一つだろう。
プレイヤーに「あつまれどうぶつの森」をオンラインゲームのように感じさせたSNSの存在、そしてそれ以外に特有のゲームデザインも一端を担っている。
効率重視のプレイを意図しない設計
「あつまれどうぶつの森」は現実の時間とゲーム内の時間をリンクさせることで、非常に遅いペースのゲームとなっている。
「スローライフ」等と呼ばれているように、ゆっくりと時間が流れる島で過ごす事が魅力となっているわけだが、SNSのようにインターネットのツールを介して他人と自分を比較する状況が生まれたことにより、自分も早く◯◯が欲しい、自分も他の人と同じように島を発展させたい、効率重視でとにかく速く進めたい、ひいては「自分は他の人より遅れている」という思考をプレイヤーにもたらすことになった。
逆コンパイルやデータマイニングをして、ゲームシステムを解析し、より効率的に「あつまれどうぶつの森」を進めることができるツールやウェブサイトも多数作られた。
「あつまれどうぶつの森」の開発チームは、同作のプレイヤーがこのような効率重視のプレイスタイルになることはほとんど意図せずにゲームを設計したはずだ。
実際、「あつまれどうぶつの森」の野上プロデューサーは、時間操作をせずにプレイすることが理想的だとインタビューで答えている。
そのような設計が原因となって生まれたフラストレーション、欲しいアイテムがすぐに手に入らない、運が良くないと手に入らない、といった不満をプレイヤーが感じることにも繋がり、他の要因と相まってRMTに手を出す動機になったと推測できる。
データのローカル保存=やりたい放題
先述の通り、「あつまれどうぶつの森」はサーバー上でセーブデータが管理されているわけではないので、言ってしまえばやりたい放題である。
発売後にゲーム内通貨の「ベル」を大量に入手できるような複製バグが発見されているが、これを悪用したプレイヤーが全員BANされたわけではない。
他人に迷惑をかけない限り、全てが自己責任で自己満足の世界だ。
「あつまれどうぶつの森」のRMTで一儲けしてやろうと思う人間なら、PCでセーブエディタを使い、データを改竄して家具やアイテム、ベル、島の住人を好きなように追加し、それを現金で売るということもやりたい放題だ。
オンラインゲームやソーシャルゲームの場合は、サーバー上のデータと整合性が取れなければ改竄されたデータは弾かれ、運営に不正だと判断され、最悪の場合私電磁的記録不正作出で逮捕などということもありえるだろう。
どうぶつの森のRMTでも詐欺報告があり、ユーザーやRMT業者がゲームの外に生み出した第2の経済システムの安全性は低く、単純に任天堂の規約にも違反することになるだろう。
無秩序であるが故に、RMTにも拍車がかかっていると考えることが可能だが、オンラインで認証しないとプレイできないようにすれば、それはそれで反発を受けるだろう。
本来はこういったタイプのゲームにはRMT需要は生まれにくいが、ゲームの人気の高さ・SNSとの親和性・効率的なプレイを意図しない設計・制限されていない経済システム、これらによってその需要は高まり、セーブデータがローカル保存であることからRMTのハードルも低くなっている。
システムだけを見ればオンラインゲームとは呼べない「あつまれどうぶつの森」がまるでオンラインゲームのような環境を内外に作り出したという事実は非常に興味深いが、RMTが本作の雰囲気を台無しにするのは明白である。
おそらく、次回作があるとすれば今回の経験を踏まえたゲームデザインになるのではないだろうか。


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