中国市場で「タワーオブファンタジー(幻塔)」が大ヒットしなかった理由

8月11日にグローバルサービスが開始されたオープンワールドRPG「タワーオブファンタジー」(以下、幻塔)は、昨年12月に中国サービスが開始され、半年が経ったが、人気や収益の面では「そこそこのヒット」に留まった。

2022年上半期は「そこそこのヒット」に留まる

中国で集計されたデータによると、いわゆる”アニメ系”のスマートフォンゲームの2022年上半期収益ランキングで『幻塔』は9位にランクインした。

日本円に換算すると130億円を売り上げており、これは「プリセンスコネクト」や「遊戯王マスターデュエル」よりも多く、上手く行っているような印象を受ける。

しかし、3月に日本でサービスを開始した「ヘブンバーンズレッド」は上半期に推定160億円の利益を上げており、市場規模の差を考えると、『幻塔』は中国ではヒットはしたが、原神やウマ娘級の大ヒットには遠く及ばなかったと言えるだろう。

1月からの月別では「5位→11位→9位→12位→13位→12位」という推移だ。

▼2022年上半期のアニメ系スマホゲームの売上ランキング
chinatop10.png
※単位は人民元

幻塔が中国でいまいち伸びなかったわけ

バグの多かった中国でのテスト

幻塔は2020年から中国で複数回テストを行ってきた。

しかし、当初はバグやグリッチが非常に多く、初期のテスターの不満は大きかったようだ。

これらのテスト段階で幻塔の品質を”察した”人々が離れていった模様。

また、サービス開始後にも無限にSSR武器が入手できてしまうバグが発見され、緊急メンテナンスを繰り返すなどしていたようである。

惜しいグラフィック

昔の中国産ゲームと比べれば遥かに良いものの、幻塔のグラフィックは何か一歩足りない、残念さがある。特にキャラクターのモデリングにそれが色濃く出ている。

tofsubtle3dcg.jpg

toweroffantasygraphics202206.jpg

モデリングは予算だけではどうにもならない、CGアーティストのセンスが問われる。

幻塔のガチャは景品が武器だが、キャラクターアバターがセットになっていることもあり、キャラクターの魅力は売上に直結する。その面で、モデリングが残念だとガチャに課金してくれる人も増えない。

キャラクターに魅力がないと、二次創作などの広がりも起こりづらいため、波及効果も小さい。

オープンワールド探索に魅力がない

幻塔のオープンワールドは探索の楽しさが不足している。

これは、幻塔が常時マルチプレイの方式を採用したためだ。幻塔は常に他のプレイヤーと同じ世界を共有する、従来のMMORPGのようなシステムになっている。

他のプレイヤーと世界を常に共有するため、フィールドに派手な仕掛けを設置しづらくなっている。攻略要素としてフィールドの構造を大きく変えるような仕掛けを実装してしまうと、同じフィールドにいる他のプレイヤーにとって非常に迷惑になる可能性があるからだ。

たとえば、「仕掛けを解くと巨大な建造物が出現する」というギミックがフィールドにあった場合、フィールドを共有している別のプレイヤーがその仕掛けを解いていない場合、何もしていないのに急に建物が出現している状態になってしまい、整合性が取れなくなる。

常に他のプレイヤーとフィールドを共有している幻塔にはこのような仕掛けが実装しづらいため、幻塔のオープンワールドは敵がいて宝箱が置かれているだけの味気ないものになっている。大規模な仕掛けはインスタンスダンジョン内に限られ、せっかくのオープンワールドが活かしきれていない。

スカイリム等のシングルプレイRPGではオープンワールド探索そのものが楽しさを感じられるコンテンツとして成立しているが、幻塔のオープンワールド探索は「キャラクター成長用アイテムを集めるためのもの」に留まっている。幻塔で本当に重要なコンテンツは全てインスタンス空間に押し込められている。

toweroffantasyfieldaf.jpg

中国のアプリ配信サイト「TapTap」におけるユーザーレビューは10点満点中5.8と低め。

toftaptap.png

グローバルサービスの行方

8月11日から始まったグローバルサービスは、これまで中国版で発生した問題のほとんどを解決した状態で始まっており、バグが足を引っ張ることはないだろう。

また、幻塔はPvPやランキングのような競争の要素があり、これらを好むユーザー層が多い地域の反応にも期待できる。

さらに、ギルドのようなコミュニティシステムもあり、協力プレイを好むユーザーに受け入れられる可能性があるだろう。

事前登録者数400万人という数字は期待の高さを物語っている。

しかし、中国市場での成績はグローバル市場での結果を暗示しているようにも思える。ヒットはしても、大ヒットにまでには至らない、そんな見通しが立つ。

幻塔は水中探索が発表されたり、かなりのペースで拡張を続けているが、既に「鳴潮」のような明らかに競合しそうなタイトルも登場しており、長期的に幻塔がプレイヤーを維持できるのかは疑問が残る。長期的な成功は、原神がVer2.0以降でプレイヤーを増やしていったように、幻塔がブレークスルーを見つけられるかどうかにかかってくるだろう。

コメント

PR
タイトルとURLをコピーしました