『World of Warcraft』dpsメーターやスキル回しアシスト等を”公式に実装する”可能性が浮上。「戦闘の外部ツール依存」を減らす方針

アドオン頼りの機能、公式に実装する

Blizzard Entertainmentは、MMORPG「World of Warcraft」の公式番組『WoWCast』の中で、ユーザーインターフェイスの改善について語り、将来的にアドオン(外部ツール)への依存を減らす方向性を示した。

World of Warcraftのシニアゲームディレクターであるイオン・ハジコスタス氏が、WoWにおける戦闘アドオンに対する考え方と今後の方針を語っている。

以下にその内容をまとめた。

戦闘アドオンへの依存を下げる意図

“外部ツールに指示されて高難易度なコンテンツをクリアするよりも、有機的に協力できる環境に戻したいと思っている”

• 「高難易度のコンテンツの攻略で最低限スタートラインに立つには外部ツールが必要だ」というプレイヤーの意見を受け、開発チームは自問した。
• 「これは私たちが長期的に目指しているゲームの姿なのか？」 「これらの問題を根本的に解決する方法はないのか？」と
• 5年前のWoWは、「必須のアドオンにはこういうのがあって、使わないと不利になりますよ」みたいな状況で、初心者が威圧されるような雰囲気があった
• アドオンはWoWの成功の大きな要因であり、疑ったり軽視したりするつもりはない
• しかし、パーティリーダーやパーティメンバーから最初に言われるのが「このアドオンをダウンロードして。次にこのアドオンも・・・」という言葉になるのは良くない
• 好き嫌いに関わらず、義務的なものになってしまう
• 『確実にクリアするために必須のアドオンがある』という状況から脱したいと思っている
• 最初のステップは、WoWに内蔵されている機能を強化し、アドオンとのギャップを埋めていくこと
• 将来的にはアドオンが戦闘中に取得できる情報に幅広い制限を設ける予定

ローテーションアシストとワンボタンアシスト機能

• WoWの人気のアドオンに「Hekili」というものがあり、次に使うべきスキルを現在の状況に基づいて強調表示してくれるというもの
• これに似た「ローテーションアシスト」という機能を実装する予定
• 推奨される「スキル回し」を、アドオンを入れてなくてもWoWの基本的なUIで教えてくれるというシステム
• 強制ではなく、ローテーションアシストの機能のオン・オフが可能
• クラスバランス調整や仕様変更に応じて継続的にローテーションアシストもアップデートしていく

▼ローテーションアシスト。黄色く光っているアイコンは次に使用が推奨されるスキルということになる。

• キーバインドすれば、1つのボタンだけで操作できる「ワンボタンアシスト」機能を実装する予定
• これは既存のアドオンでは実現不可能なもの
• 1つのボタンを押すだけで次の推奨スキルを自動的に発動できる
• ただし、ワンボタン操作を使うとGCDにわずかなペナルティが伴う
• アクセシビリティ機能の一種だが、ストーリーや探索をじっくりとやりたい人や、スキル回しをマスターすることに興味がない人に向けたもの
• 「ワンボタンモードにしてDPSチェックをクリアしろ」と指示するためのツールではない
• WoWを初めてプレイする人は、多くのことが同時に起こると何をすればいいのか迷ってしまう
• 最初はクラスを学ぶためのガイドとして活用し、最終的にはワンボタン操作やローテーションアシストなしでプレイするのが理想
• 自キャラクターの前にいる敵の数や射程内に何体いるかなどを検出し、推奨スキルに反映することもできる

▼ワンボタン操作の画面（Single-Button Assistant）

ダメージメーターへの考え方

• WoWプレイヤーの大多数は、ダメージメーターアドオンをインストールしている
• これが意味するのは、プレイヤーがその情報を知りたいと思っているということ
• より細かな成功や理解の尺度を導入したいと考えている
• 回避可能なダメージを強調して、パフォーマンスの全体像をより明確に把握できるようにしたい
• 新装備や新しいビルドを試したい人は、前回のプレイと比較して、どれだけの変化があるのかを確認したがるはず
• アドオンの機能を制限するのなら、独自のダメージメーターという解決策を提供する必要がある
• 公式のダメージメーターであれば、戦闘フェーズやプレイヤーの位置などの影響を受けずにサーバーから常に正確な情報が得られる

Blizzard Entertainmentは、ボスのタイムラインがUIの一部として表示されるような仕組みも考えているという。

レイド設計への影響

• アドオンの普及はWorld of Warcraftのレイド設計に影響を与えた
• 本来は、レイドでどう行動するべきか、どうやってギミックを解くかはプレイヤー自身が考え、パーティメンバーと話し合って攻略するべき
• しかし何年も前に、「レイドやダンジョンでプレイヤーにどう行動するべきかをテキストや音声で教えてくれるアドオン」が登場した
• そのようなアドオンの登場により、レイドの複雑なギミックでも、何も考えずにアドオンに言われた通りに行動するだけになった
• レイドが難しくなっているのにプレイヤーから「戦闘が物足りない」というフィードバックが寄せられた
• その状況に対応すべく開発チームはギミックをさらに複雑にしていったため、アドオンなしではクリアできないと言われてしまうようになった
• レイドのギミックの大半はアドオンが処理してくれるのでプレイヤーは気にする必要がない、という状況は良いとは言えない
• 「特定のギミックの重要度や効果がゲーム内の情報だけでは十分に伝わってこないので外部ツールに頼る必要がある」という意見もあった
• 敵が一撃でプレイヤーを倒すような攻撃をしてくる場合、しかも複数のギミックが同時進行する中にそれがある場合、どのようにプレイヤーにその重要度を伝えるかというのが課題

開発チームは、アドオンが不要になることを最終目標とした上で、現行のアドオンの代替になる機能をゲームのUIとして実装したり、あるいはレイド等の設計そのものをアドオンがなくてもクリアできるように変更するという方針だ。

ハジコスタス氏は、「パッチのリリース日は未定ですが、ダメージメーターやネームプレートの改善を検討しています。」と語っており、WoWに公式ダメージメーターが登場する日がやってくるかもしれない。

一方で、「アドオン機能を制限するのは最後の手段」であり、外部ツールを取り上げるわけではないと言明している。あくまで方針は、ゲームの基本機能とアドオンとのギャップを埋めるということにある。

そのために、アドオンありきで設計されたレイドやダンジョンも、難易度を維持しつつ、複雑さを減らすことで、アドオンが不要になるように様々な修正や調整を行っていくとしている。

なお、非戦闘系のアドオンについては特に規制する予定はないとしている。