2016年には「Tree of Savior」や「BLESS」、「リネージュ エターナル」といったMMORPGが登場する予定だが、「2016年はメインストリームのMMORPGの終わりの年」そんな議論が海外のゲームサイトMMORPG.comのフォーラムで行われている。
少なくとも欧米では、今後登場するMMORPGはインディーデベロッパーのような小さな開発会社が制作したものばかりで、そのターゲットとなる利用者は(主流のMMORPGよりも)ずっと小規模で、それ以外は焼き増しのような韓国産や中国産のゲームばかりだと、この投稿者は主張している。
そして、シングルプレイヤーRPGが再び日の目を見ることになるという。
メインストリームのMMORPGの時代が一度終わりを迎えることにより、将来のMMORPGにもっと多様性が生まれることになるため、主流のMMORPGの終焉はジャンルにとっては良いことだという。
もちろんこれは現在サービスを行っているMMORPGが終わりを迎えてしまうというような無茶苦茶な話ではなく、大作MMORPGの新作は2016年を境に一旦落ち着き、しばらくの間はインディーメーカーのような小さな会社が開発したニッチなMMORPGが新作として登場することがほとんどになるという考えだ。ただし、そういったニッチなMMORPGの人気は小規模に留まることになる。
▼インディーメーカーが開発するMMORPGは多いが、メインストリームのMMORPGのように万人受けを狙っていないかなり野心的なシステムを持つものが多い。
MMORPG「World of Warcraft」の月額課金者数の推移。拡張パックが発売される度に月額課金者は増えるが、最近では550万人程度まで減少し、ピーク時の1200万人の半分以下になっている。
この投稿者は、最近の欧米におけるMMORPG関連の話題を次のように紹介している。
- BlizzardはMMORPG「Project Titan」の開発を中止し、FPS「オーバーウォッチ」を開発している
- WoWの月額課金者が大幅に減少した
- 「Wildstar」は基本プレイ無料化したが、Wildstar自体が忘れ去られている
- SOEが売却されたため、EverQuest Nextは完成するかどうかわからない状況(社長はベーパーウェアを否定しているが)
- 2つの韓国製MMORPG(ブレイドアンドソウル、黒い砂漠)がようやく欧米に登場
- 2015年は欧米の人々がArcheAgeにかつて期待していたことを忘れた年
- ギルドウォーズ2の拡張パックが発売されたが、誰かまだプレイしていますか?
- たくさんのインディー企業が聞いたこともないようなMMOを開発したがっている
- 新たなWoWのクローンが発表されていない
おそらくこれは日本も例外ではないのだろう。
まだ多くの新作MMORPGがサービス開始を控えていると思われるが、そういったゲームが実際にサービスを開始して、1年後も高い人気を維持できているのかと言われると些か疑問が残る。
MMORPGの開発会社も、新作を開発しても数ヶ月で人気が廃れてしまうのであれば、あるいはそういったMMORPGを幾度と無く見ていれば、別のジャンルのゲームやスマートフォンゲームを作ったほうが良いと考えるかもしれない。
2016年にはLeague of Legendsの日本サービスが開始される可能性が高いが、そのことは日本のオンラインゲームのコミュニティにある程度の影響を与えるのは間違いないはずだ。
2015年にはオンラインカードゲーム「Hearthstone」の日本語版も登場した。
また、Wii UのオンラインTPS「スプラトゥーン」が日本で爆発的にヒットしたように、「オンラインゲーム」の代表的なジャンルがMMORPGでなくなる日は近いのかもしれない。
近隣諸国では、例えば韓国のオンラインゲームトップ3は「LoL」「FIFA Online 3」「サドンアタック」で、中国ではトップ3が「LoL」「アラド戦記」「クロスファイア」というように、PCオンラインゲームが盛んな2つの国でもMMORPGは一つもトップ3に入っていない。
よく言われるのが、MOBAやFPSのように数十分の”1試合”で区切りがつくオンラインゲームのほうが気軽で、その方が現代のプレイヤーが好む傾向があるということだ。MMORPGはその真逆。
我々の生活スタイルの変化、スマートフォンの普及、マルチプレイ・オンラインプレイが可能なジャンルの多様化、基本プレイ無料ゲームの増加、シングルプレイヤーRPGの再興、MMORPGがどれも似たようなものになったこと、MMORPGの開発の難しさ、プレイヤーのMMORPGへの慣れ、など様々な要素が複雑に絡み合って、大手のメーカーが手が出しづらいジャンルになってきている。
現状では、大勢のプレイヤーに受け入れられることをどうしても考慮しなければならない大手メーカーは、一か八かで無難なMMORPGを今から開発するというのはあまり賢い判断とはいえないだろう。
日本でも海外でもモバイルゲーム市場が急速に成長したが、スマートフォンの操作性やプレイヤー層を考えるとモバイルMMORPGがメインストリームになるのは難しそうだ。
現在人気のあるMMORPGが何かを契機に爆発的に人気を増やすというのも考えにくい。
考えてみれば、MMORPGというジャンルはその特性ゆえに、要素ごとに比較すると他のジャンルにかなわない点も多い。
例えば、MMORPGのストーリーがシングルプレイRPGやアクションアドベンチャーゲームのストーリーよりも面白いということはめったにないし、MMORPGの戦闘がアクションゲームの戦闘よりも爽快感があり、複雑な動きができるということもほとんどない。
キャラクターの成長という部分でも、MMORPGはバランスを配慮したデザインになっていたり、レベル上げに時間がかかるなどあって、シングルプレイRPGの方がもっと成長を感じやすいと言えるだろう。PvPは言うまでもない。
MMORPGの最大の魅力である他人との関わり合い、大勢のプレイヤーがいる世界だが、万人受けさせようとすればするほどこの部分の魅力が損なわれているように思えるし、実際にMMO本来の魅力が薄いゲームが多く世に出回ったのは確かだ。
シングルプレイRPGではオブリビオンやスカイリムが大ヒットし高い評価を得た「エルダースクロールズ」シリーズだが、MMORPGになると一気にその魅力を失った「Elder Scrolls Online」
完全にMMOではないが、オンラインゲームにしたことがむしろ失策だったという意見も多い「ドラゴンズドグマ オンライン」
シングルプレイヤーRPG「Fallout 4」は初回出荷1200万本を記録し大ヒット。ゲームの中では他のプレイヤーと繋がっていなくとも、ゲームの外のコミュニティでプレイヤー間の交流がある。
最初に「ジャンルにとっては良いこと」だという言葉があったように、メインストリームのMMORPGが一度落ち着き、MMORPGのジャンルがニッチ化する中で、もしかしたら将来革命を起こすMMORPGが登場するのかもしれない。
また、インディーデベロッパーが開発するニッチなMMORPGだからこそ、万人受けはしない要素(例えばフルルートのPvPやスキルベースの戦闘、セッション制など)を取り入れることができるという利点もある。
ジャンルにとって厳しい時代の中で、現行のMMORPGや新たに登場するMMORPGがどういった方向性を打ち出していくのかというのも注目すべき点だと言えるだろう。
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