海外メディアのMMORPG.comは、「現代MMORPGで失われた『魔法(Enchantment)』」として、ゲーム内のファンタジー世界に没入感が失くなっていることを指摘している。
トールキンの「第ニ世界」
指輪物語などで知られるJ.R.R.トールキンが提唱した「第ニ世界(Secondary World)」の概念では、架空の世界の法則を緻密に構築することにより、読者は一時的にその世界を本物のように受け入れられるとされている。
魔法やドラゴンが登場する世界であっても、歴史や法則に一貫性があって整合性が取れていれば、作り物の嘘だと思いながら没入するのではなく、一時的に虚構も真実として信じ込んでファンタジーを楽しめるというのがトールキンの考え。
そして、RPG、特にMMORPGはトールキンの理論がより強く適用でき、仮想世界へ没入できることが大きな魅力になっていると説明されている。

“ほとんどの現代MMORPGはもはや第二世界として機能していない”
MMORPG.comの記事では、かつてのオンラインRPGはトールキンが提唱した第ニ世界のような、ファンタジー世界として没入できるものだったが、近年のオンラインRPGはそういった魅力がなくなってしまったと指摘されている。
“もはや第二世界として機能していない”
現代のオンラインRPG・MMORPGは、プレイしていると開発・運営の意図が透けて見えてしまい、「この世界は作り物だ」とプレイヤーが意識し、没入感が崩壊するという。
現実世界の事情がチラつくと魔法が解ける
The moment disbelief arises, the spell is broken.
(疑念が生まれた瞬間、魔法は解ける)
架空の世界を作るなら、文学であれゲームであれ、その世界への没入を壊してはいけないのは明らかだが、現代のオンラインRPGはそれをやってしまっているというのがMMORPG.comの記事での主張だ。
具体的に現代オンラインRPGのどういった点が没入感を壊すのか。
1.多すぎるワープポイント
- 昔のMMORPGでは、広いマップでもワープ地点は1~2個しかなかった
- ワープポイントから目的地までの移動は大変だったが、そのおかげで世界の広さを実感できた
- 現代のオンラインRPGではマップのあらゆる場所にワープポイントが設置されている
- ➡️移動の負担を減らすという”現実世界の事情”
どこに行くにも近場のワープポイントにファストトラベルして少し移動するだけなので、距離が「近い」「遠い」という感覚が無くなることで、マップは広いのに多すぎるワープポイントのせいで嘘っぽく感じられるというわけだ。
世界の大きさを実感できることよりもゲームとしての利便性を重視したことで、この感覚がオンラインRPGから失われてしまったという。

2.説明過多
謎の多い世界は大きく感じられるという。
しかし、現代のRPGは設定を説明しすぎており、wikiや設定資料を読んでいるような感覚に陥ることがあると指摘されている。
普通に世界を旅しているだけでは到底わからないようなことまでもストーリー上で説明されるなど、「プレイヤーがわかりやすいように」という開発者側の事情がチラつくわけだ。
トールキンは著書で次のように表現している。
目の前に出されたスープで満足すべきであって、それを煮出した牛の骨まで見たいと望むべきではない
「完全に理解されてしまった世界は、その最たる魅力の一つを失う」
世界観や設定を説明すればするほど没入感が増すわけではなく、謎が多く残っている世界ほど「第ニ世界」としては優れているという意見だ。
3.「住人」から「役者」のようになったNPC
🤷現代のオンラインRPGでは、物語の中心が少数の主要キャラクターに集中しているという。

トールキンは次のように論じている。
ドラマは人間中心主義的だが、妖精物語やファンタジーは必ずしも人間中心主義である必要はない
❌️主人公やその仲間の数人はストーリーを支えることができるが、ファンタジー世界そのものを支えることはできない。ファンタジー世界を支えられるのは『目立たない住人たち』だけ。
人間中心主義とは「環境は人間に利用されるために存在する」という考え方であり、今回のケースでは、「ファンタジー世界が主人公達の物語を描くためだけに存在する」という考え方と言える。
昔のオンラインRPGは、世界に存在するほぼすべてのNPCに何らかの存在理由があったという。
現代オンラインRPGは「シングルプレイRPGのキャラクターがたまたまMMOの世界に置かれているだけのようだ」と指摘されている。
プレイヤーがファンタジー世界を”信じる”ためには、主人公達がいなくてもその世界が存在しているかのように感じさせなければならない。
まるで主人公達一行がやってきた時だけ動き出して役者のように振る舞うNPCの存在は、そこが世界というより単なる作り物の舞台のように感じられる。
4.ゲーム内での課金商品の宣伝
特に酷いものであり、プレイヤーに現実を強く意識させる(リアルマネー・効率 etc)
プレイヤーに「ここはファンタジー世界の中ではなくゲームサービスの中だ」と意識させてしまい、没入感が壊れる。
ゲーム内における課金関連の宣伝や課金ショップのようなものは、ファンタジー世界の中から現実世界が見えてしまう窓だと表現されている。
ファンタジー小説や映画でこのようなことは決して起こらない。
ファンタジー映画の劇中で現実の商品を「今なら期間限定で◯◯円!お得!」と宣伝するようなことはありえない。
これをやっているのが現代のオンラインRPGというわけだ。

5.効率化されすぎたクエスト設計
昔のMMORPGではクエストNPCからとんでもなく離れた場所までお遣いをさせられることがあったという。
現代MMORPGの基準では考えられないが、遠い場所までのお遣いクエストは、各地域が繋がっている・世界が一つであるという感覚を強める効果があった。
1エリア内で完結させる現代のクエスト設計は、移動距離が短く便利でストレスフリーだが、皮肉なことに、より『お遣い』をさせられている感覚になりやすい。
「効率は現実世界の価値」であり、ファンタジー世界(第二世界)の価値は異なる優先順位だと指摘されている。
要するに、利便性が高い・効率的なクエスト設計は、ファンタジー世界の事情ではなく、現実世界の事情が透けて見える例である。

6.現実の延長のように感じさせるテーマの導入
トールキンは次のように述べている。
その物語全体が作り物や幻想にすぎないと示唆するような枠組みや仕掛けは許容できない。
🌍️現実の社会問題や政治問題を反映させるような設定やストーリーをゲーム内にそのまま持ち込んだり、まるでSNS上の会話のようなセリフをファンタジー世界に入れるべきではないという主張だ。
現実社会のテーマをゲームのストーリーに組み入れる場合は、ファンタジー世界に設定された歴史や文化を考慮した上で、何かに置き換えたり喩える必要がある。
そのようなテーマを入れてはいけないという意味ではなく、露骨に主張して現実の問題を連想させてはならないという意見だ。
WoWで物議を醸した「カドガーの車椅子」
MMORPG「World of Warcraft」でプレイヤーから批判の的となったのが、カドガーというキャラクターが車椅子に乗って登場したシーンだ。
カドガーは危機を救うために使った魔法の後遺症で歩けなくなり、車椅子に乗るようになったという事情がある。

しかし、多くのWoWプレイヤー達は、なぜアークメイジが車椅子に乗るのかと総ツッコミを入れたのだった。
WoWには既に魔法で空を飛んだり、空を飛ぶ乗り物があったり、瞬間移動といったものがあるため、現実世界にあるような形の車椅子を必要とすることへの違和感が拭えなかったのだ。

また、現実でならトラウマになるような障害を、あまりにも簡単に受け入れているという指摘もあったという。
アークメイジという立場にある人物が歩けなってしまうのであれば、WoWの世界観を考慮した上で説得力のある表現をするべきであり、取ってつけたような車椅子をファンタジー世界の中に入れるだけで済ませるなという批判がされている。
まとめ
オンラインRPGの世界が、トールキンの提唱した「第ニ世界」として成立するには、作り手の『都合』が見えてはならないというのが大前提だ。
しかし、利便性を重視し、効率化を図り、収益性を高めていった結果、遊びやすさを得られた代わりに、プレイヤーを現実世界を強く意識させすぎてしまい、ファンタジー世界としての没入感は失われてしまったようだ。
MMORPG.comの記事では、次のように締めくくっている。
過剰なファストトラベル、設定や世界観の説明過多、映画のような主人公の遍在、露骨な時事ネタ、そして絶えずプレイヤーに宣伝される課金要素はすべて、世界を縫い合わせている縫い目が見えてしまった状態である。
縫い目が一つ見える度に、プレイヤーがその世界を信じられなくなる理由が増え、世界の住人にファンタジー世界という「魔法」をかける機会が一つずつ失われていく。
トールキンの作品を読み、20年に渡ってジャンルの歴史を紐解いた私の結論は、『現代のMMORPGのほとんどはもはや第二世界として機能していない』ということだ。現代のMMORPGは『現実世界の延長』として機能し、私たちのアイデンティティ、予定表、財布、そして社会問題と結びついているのです。
ソース: MMORPG.com


コメント
現実を忘れて仮想世界に没入してあたシコする
これこそがMMOの醍醐味ですよね
それな
あたシコがすべて
現実を忘れられるなら仮想世界じゃなくてもいいんだよな
アタシコはその通り
オリジナル言語を作るレベルでガチガチの世界観を構築したのってギャリ夫くらい?
Ultimaの資産を使った結果ってだけでゼロから作ったわけではないけど
ユーザーが求めた結果なのに、それを作り手の都合とするのはいかがなものか
ぼくのかんがえたさいきょうのMMOですか?
売れるといいね
FF14が最新の拡張で主人公を世界の中心から少しずらしただけで滅茶苦茶文句言われたからな
今のMMOプレイヤーってオフラインゲーにオンライン要素加わったものを望んでるんだろう
コメントが全員主語がでかい
20年くらい前はインターネット自体が現実とは別のもう一つの世界みたいなところもあったけど
ネットが身近になった上に、ボイチャしながらゲームするのも当たり前なご時世に
MMOで現実とは違うもう一つの世界に没頭するなんて成立しないんよ
車椅子は別にいいと思うんだけどなぁ
魔力で常時体を楽な姿勢で固定して
浮かせておくとか無限にMP要りそうじゃん
普段の生活は姿勢を椅子で物理的に固定して
動きたいときに車輪を魔力で回すとかのほうが
絶対力の使い方上手いじゃん
言いたいことはわかるけど、世界観に忠実にしすぎると不便なだけだからね。現状がベストとは言わないけど、不便でわかりにくいゲームよりはマシ。
これらの指摘を総合すると2000年代前半のMMOが理想なんだろうね
課金誘導もなければ世界観を邪魔する要素もなく、ただひたすら広大なファンタジー世界に没入できた
ただ今思うと拠点間の移動はできても狩場への直接移動が人力で10分以上かかるなんて当たり前だったし、自分たちの知らないところでRMTが蔓延っていた
今のオート狩りオート移動搭載で課金だらけのMMOこそ当時のユーザーが望んだ結果なのだろうね
昔のには昔の、今のには今の良いところがある
だから温厚知新のFF11リブートで良かったんだよな
良い物程潰される
不便な方が雰囲気はでるというのはあるな
今だとマッチングでID突入するから何もチャットしないから交流も生まれないけどチャットで誘ってダンジョン行くとかのほうが雰囲気は生まれる
どっちが楽しいかは人それぞれ
1は、プレイヤーへの過剰な忖度と、作り手が楽する為
2は、作り手の過剰な自己顕示欲
3は、作り手が稚拙なセンス無しの下手糞
4は、土台なシステムから低レベルと公言してるのと同義
5は、そもそもにクエストで時短になる報酬という形が、運営に操作されてる感ヒシヒシ
6は、作り手がそのゲームにもプレイヤーへも、愛が無いって表れ
纒は、クエストの実装で、俺達の世界に運営が露骨に介入してきた‥結果、覚めて冷めた。
最後のはROで感じた一例…
あぁ…同じRO民としてわかるわ
昔のFF11思い出してみればわかるけど ああいう不便で何か一つやるにも徒歩だし長時間がかかるけど世界に溶け込んだ一人になれて没入感があってっていう事なんだろう
今は一瞬で殆どの場所にワープできて人集めも不要又はオートで組めてオートで歩いてコンテンツを最速で終わらせて動画でマウントを取るっていう謎の遊びになってるからな(終わったら別ゲー)
経験済みの俺等からすればこういった重厚なのはありがたいけど 今の世代にあの頃の説明も攻略もほぼヒントなし手探りでやらすのはクレームの嵐になると思うわ
あとアナリストとか株主とかにプレゼンした時にデメリット突き回されて廃案になるだろね
時代がそういうゲームデザインを拒絶してるんよな
寂しいけどしょうがない
ファスト映画なんてやり方が大成功してしまったりする時代やし
主語デカすぎだし勝手に故人の権威を借りてるしで突っ込みどころしかないけど唯一2と3に関してはギリ分らんでもない(MMOに限った話じゃないが)多分今どきのトレンドなんだろうけどねぇ…
これらをすべて解決した理想のMMORPGは莫大な広告費と開発費を投入した覇権を実現したもの以外成しえない
それを可能にする企業は地球上に存在しない
俺は個人開発のMMOの方が成立し得ると思う
開発・運営コストを極力小さくし、極少数のマニアックなプレイヤーでも利益が出る構造に出来れば成立するかもしれない
昔のMMOはよかったって言ってるプレイヤーも実際に昔を再現したMMOやったら脱落して成立しないと思うんだよね
こんなはずじゃない昔のMMOはもっと楽しかったって言い続ける悲しいモンスター
まるで違うジャンルのものを理想と仮定することに意味があるとは思えない
トールキンの小説が「今」売れているとも思えない
企業は利益が出なければ存続出来ない
「あの頃は良かった」という気持ちはよくわかるが
どうも問題定義がずれているようにしか思えない
「ユーザーは現実とは違うもう一つの世界に没入したい」
この前提はVRChatやマイクラが否定してしまったよ
「ユーザーは現実とは違うもう一人の自分になりたい」が正解
エロにせよ俺スゲーにせよ配信にせよアタシコできる環境が重要なのであって、もう一つの世界はいらないんよ
SNSとリンクしても別の自分としてアタシコしてるのが現実でありMMOの本質で醍醐味だからね
俺ツエーをゲーム内でひけらかす
攻略情報を掲示板でひけらかしてドヤる
情報共有ネタを流して俺スゲーで気持ちよくなる
MMOでスクショを撮りSNSで共有して楽しむ
配信で承認欲求を満たす
今も昔もMMO=アタシコや
二次世界の没入感はオマケ
・ワープは各町へのポータル程度、他の手段もあるが装備重量次第で高額ボられるので騎乗で目的地まで走るのが基本
・説明過多どころか常に説明不足、習うより慣れろを地で行く
・メインクエスト?魅力的なNPC?そんなものは存在しない、お前が生きたいように生きろ
ここまでの懐古要素が揃っているにも関わらず「PvPに偏りすぎ」の一点で流行らんMMO
それがAlbion onlineだ
作って見せ付けねば、面白さは理解されんよ?
主張したい事はわかるけど
論理武装がイマイチじゃないか?
こんな事言い出したら
リリース直後に
初期マップに初期装備のキャラが大量にいる状態がもうすでに
現実世界の都合を感じる最たるものになっちまう