スマホゲームの「スタミナ」はプレイヤーをゲーム中毒にさせるために存在する

モバイルゲーム

今更ながら、スマートフォンゲームにおける「スタミナ」の話。

抑制どころかむしろ中毒にさせるためのスタミナ

かつてPCオンラインゲームの疲労度は、過度に長時間連続してプレイすることを防ぐ目的やコンテンツ消費速度を落とす目的で導入されたが、スマートフォンゲームの場合は「課金誘導」と「中毒性を高める」という目的で導入されていることがほとんどだ。

大半のPCオンラインゲームの疲労度が1日毎に一気に回復するのに対し、スマートフォンゲームのスタミナは数分毎に1ずつ回復するという仕組みの違いからもこれは明らかだ。

説明は必要ないかもしれないが、ゲームのコンテンツをプレイすると消費され、不足するとそれ以上遊べなくなるというのがスタミナの基本で、スマホゲーでは時間経過で回復することが多い。また、スタミナ回復手段が課金アイテムとして販売されているものも多い。

スタミナによる課金誘導に関しては多くの人がなんとなく理解しているので詳しくは解説しないが、スタミナがなくなった時に課金させてスタミナを回復させるという事だ。

一方で、スタミナを導入することで中毒性を高めているという点については認知度が低いのかもしれない。

スマートフォンゲームのプレイヤーの多くは無課金あるいは少額課金でプレイしている。1%の以下のプレイヤーがゲームの売上の半分以上を占めているというデータからも明らかだ。

まず、無課金のプレイヤーはゲームをある程度やりこんだ時にスタミナの枯渇に直面する。
すると、多くのプレイヤーは回復するまでいったん休止しようと考える。
しかし、それと同時に「そろそろスタミナが回復したかな?」という意識をするようになり、スタミナを効率的に消費するために朝昼晩とゲームを遊ぶようになる。

逆にスタミナを効率的に消費できていないと「もったいない」と感じるようになる。

すなわち、スタミナでプレイを抑制させるのではなくむしろゲームを遊ぶ回数を増やし、実際のゲームへの熱中度に関わらず常にゲームの事を意識させることが可能となる。
携帯可能なスマートフォンなので、外出先や勤務先、学校などでもプレイできてしまう。

中毒性が高まり、もはやスタミナの回復を待っていられないほどになれば成功だ。一度でも課金させることができれば、課金する事への抵抗感がぐっと減少し、ガチャ等にも課金して貰いやすくなるわけだ。ゲーム中毒にさせた上で課金に誘導する。非常に巧く出来ている。

スタミナが回復する度にログインしてもらうことで、単純にアクティブユーザーを維持するという意味でも大きい。

このスタミナシステムは、いわゆるログインボーナスとは比べ物にならないほどユーザーをゲームに執着させる力がある悪魔的なものだったりする。

かつて長時間連続してプレイすることが問題となった一昔前のオンラインゲームと比較すると興味深い。

  • 一昔前のオンラインゲーム:
    レベル上げや装備集めに莫大な時間の投資が必要なゲームデザイン
    →時間投資がゲームの進行に直結する
    +ギルドやフレンドといったコミュニティの存在
    →長期間継続してプレイさせる
  • スタミナのある一部のスマホゲーム:
    それなりの時間投資が必要
    →スタミナの制限により連続してプレイさせない
    →ゲームをやっていない時にもスタミナの回復を意識させる
    →定期的にログインさせる
    ※連続してプレイしたい人には課金してもらう→課金への抵抗感を下げる

基本プレイ無料のスマートフォンゲームの場合、長時間連続してプレイしてもらうことよりも、毎日プレイしてもらうことの方が重要で、その意味でもスタミナの仕組みは理にかなっていると言えるだろう。

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長時間プレイできると飽きられやすい?

さらに、このスタミナのおかげで、ゲームのポテンシャルを隠すことも可能だ。

ゲームが本当に面白い場合、何時間もついついプレイしてしまったりするが、プレイすればプレイするほどそのゲームが本当に面白いのかどうかは見えてくる。

ポテンシャルが低い場合はどんなゲームでも、長時間プレイ可能だと飽きられてしまいやすい。スマホゲーでなくとも、例えばヒットしたオープンワールドゲームでさえ、最後までクリアしていない人が多いというデータがあったりもする。コンテンツが残っているのにプレイすればプレイするほどつまらなくなるゲームは底が浅い。

プレイヤーがゲームが本当に面白いのかどうかを判断する前に、スタミナで一旦中断させてしまうことで長時間プレイさせないようにして飽きにくくできる可能性もあるというわけだ。ただし、最初から本当にゲームとして魅力がないとそれどころではないが・・・。

スマートフォンの普及で一気に増えたカジュアルゲーマーはそもそもゲームに費やせる時間が少なかったりするので、ゲームを長時間プレイさせ続けるよりも、毎日、数回ログインする事を習慣にさせてしまう方が賢い。

また、ウルティマオンラインのゲームデザイナー、Raph Koster氏は「楽しさの本質は『学習』であり、それ以上学べるパターンが存在しない場合は楽しさも失われる」と定義している。

こういった射幸心を煽るタイプのスマートフォンゲームの多くでは、わりと早い段階で新たに学べることはほとんどなくなっているのだが、ゲームに費やした時間やお金が惜しいという理由で引き際がわからなくなり、続けているだけという事になっている人も多いのかもしれない。(心理現象:コンコルド効果

最近ではスタミナは見直されてきている

近年はこのスタミナシステムが見直されてきており、導入しないゲームも増えている。「白猫プロジェクト」のヒットはこのスタミナがなかったことも大きい。また、よほどの廃人プレイをしない限りは実質的にスタミナは枯渇しないというゲームもわりと多くなっている。(そもそもスマートフォンゲームの黎明期にはスタミナがないゲームで世界的人気となったものも多いのだが。)

「ゲームをプレイさせ続けるために、ゲームをプレイさせ続けない」のがスマートフォンゲームのスタミナシステムであり、実に上手くできているが、容赦がない。

スマートフォンゲームの中毒性についてスタミナだけで語ることはできないが、中毒性を高める要素の一つになっているのは間違いないだろう。

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