1970年代からゲーム業界で活躍する大ベテランのゲームデザイナー、Greg Costikyan氏がGamasutraに寄稿した「Ethical Free-to-Play Game Design (And Why it Matters)」(倫理的な基本プレイ無料ゲームのデザインとなぜそれが重要なのか)について要約して紹介
スマートフォンの普及で、日本でも基本プレイ無料のゲームに触れる人は多くなっているが、こういった基本プレイ無料ゲームを長期的に成功させるためには倫理にかなったものでなければならないというのがGreg Costikyan氏の考え方だ
日本ではここ数年でソーシャルゲームの人気が爆発的に高まっており、この手の問題も様々な場所で見かけることがあるが、そこには倫理や道徳といった部分が必ずと言っていいほど関わっている。
また、あなたがプレイしている/プレイしていた基本プレイ無料のゲームはこれらの項目をどの程度クリアできているだろうか。
原文は非常に長いので、全部読みたい方はGamasutraへ
Ethical Free-to-Play Game Design (And Why it Matters)
プレイヤーを尊重せよ
- カジュアルゲームではほとんどプレイヤーはゲームのことを何も知らない
- 開発者はこのことを念頭に置かなければならない
- 「プレイヤーは無知だ」「プレイヤーを尊重せよ」という2つの言葉は矛盾しているように見える。それでも開発者はユーザーインターフェイスをシンプルにし、収益システムには尊重を込めるという両方のことをしなければならない
長期的に計画せよ
- ゲームプレイの変更が与える短期的な効果から長期的な影響を予測するのは難しいようにみえるが、実際には常識と直感でかなりの部分まで特定することができる
- 単純に短期的なメトリクスに影響させるものを変更とする考え方をやめ、ゲームプレイを改善させる機会として考えよ
- 収益を改善するための変更はしなければならないが、純粋にゲームデザインの観点からより良いゲームを作る努力をしなければならない
- 良い運営チームには、プレイヤーを代弁するゲームデザイナーと収益を代弁するプロダクトマネージャー、そして2人の間を仲介し、貴重な開発リソースの配分を決定するプロデューサーが存在する
驚かせ、楽しませよ
- 「少なくとも生存可能な製品」を作り、人が集まれば改善に投資する。そんなものが成功した試しはない。
- どんなゲームもローンチは一度だけ。洗練されたクールなものが出来るまで、絶対にゲームを広くローンチしてはならない
- 最初に集まったプレイヤーの方が後から来るプレイヤーよりもたくさんのお金を使うというデータが示している
- あなたのゲームのプレイヤーはA/Bテストに使われるモルモットではない。生きている人間だ
- エンターテインメント業界にいるのなら、最初から質の高いエンターテインメントを提供する義務がある
コンテンツへの課金はいつでも大丈夫
- リーグ・オブ・レジェンドのチャンピオンの販売は合理的。お金を出せば必ず入手でき、その価値を直接確認することができる
- コンテンツを開発するのには時間とお金がかかり、消耗品や難関を突破するためのアイテムほど収益性は高くない
- しかし、たった一度の時間節約よりもプレイヤーがお金を払いたくなるものである
- コンテンツを売れば課金するプレイヤーの割合は多くなるのは保証する
Pay to WinではなくPay to Progress
- Wargaming.netはWorld of Tanksから「お金を払えば勝てる」要素を排除した
- 非課金プレイヤーや予算が限られるプレイヤーは、常識はずれの高額課金をしたプレイヤーに打ち負かされることに強い不快感を感じ、ゲームをやめる理由となる
- 課金によって成長が速くなるのは良いが、課金しないと戦闘に勝てないようなアドバンテージを持たせてはならない
課金対象物の価値・有用性をプレイヤーに見せよ
- リーグ・オブ・レジェンドでは週替りで無料でプレイできるチャンピオンキャラクターが変わる
- プレイヤーはそこで長所と短所を知ることができるなど、積極的に試す機会が与えられている
- そのプレイスタイルを好むプレイヤーには購入の動機が生じ、無料期間が終わった瞬間に売り上げに繋がる
- 買う前に試すことのできるというのは言い換えれば、プレイヤーが肯定的かつ不満のでないものを見つけられる方法
Grind(作業のようなプレイ)はOK、高い壁はNG
- ゲームデザインの観点からは作業ゲーは理想的ではないが、終わりがないゲームでは避けられない
- 将来の収益化を期待してプレイさせ続けることは、怒らせてゲームをやめられるよりはマシだ
- 無課金でプレイできますと約束したのなら、たとえ作業ゲーになったとしてもその約束はずっと守らなくてはならない。「無課金者はわずかな確率で先に進めます」と言ってしまうよりは意味がある。
おとり商法を使うな
高額な課金をしなくても狩りを続ければ報酬を得られたり、そこに到達できると見せかけて、実はその機会は与えられないということをプレイヤーが見抜けば、最終的にはプレイヤーを失うことになるだろう
プレイヤーは友人・支持者だと思え
- 顧客サービスと信頼関係のマネージメントという魔術をもう一度学ぶ必要がある
- MMOの運営者はフォーラムの重要性を、ファンがゲームの代弁者になることを、アップデートが問題を引き起こすことを、フォーラムで話されている内容で早く兆候を見抜けるということを、良いアイデアがプレイヤーから出ることをよく知っている。
- 無料ゲームの顧客サービスは回収できない費用(埋没費用)として扱われ、無視されるか最小化されてきた
- 顧客サービスは埋没費用ではない。顧客サービスは失う可能性のあるプレイヤーを留めるためのチャンスになる。
- 手の中に1人の顧客がいるのは藪の中に顧客が2人いるのと変わらない
支払いの上限を設定できるようにせよ
- 無料ゲーム市場は、ほとんどのゲームが莫大なお金を使う少数のプレイヤーに依存してきた
- これがサウジアラビアの王族やITバブルで儲けた大富豪であれば倫理的に問題になることはないだろうが、駐車場に住み着いている人が不相応に50万円を使っていたら問題だ
- 「今月既に○○○円使いました。本当にまた○○○円支払いますか?」のようなダイアログを出したり、「私は途方もなくお金持ちなので二度とこういうウィンドウを表示しないでください」というチェックボックスを作ったりするのが良い
お金を払いたくなるもの
基本プレイ無料ゲームではプレイヤーにいかにお金を使わせるかばかりを考えているが、プレイヤーがお金を使いたくなるようなものとは何か。
以下は、倫理的な無料ゲームのデザインでプレイヤーが確実に長く遊んでくれる、成熟した市場にアプローチする際の賢い方法。同時にゲームを長く続かせることができるもの。
- 有用性が示されており、プレイヤーは課金する物を理解しそれに価値を見出している。
- 驚きの溢れる非常に楽しい体験をさせてくれるゲームであり、ゲームの将来をサポートするためにプレイヤーが少額のお金を出すことをためらわないもの
- 運営・開発がコミュニティでプレイヤーとよく交流し、プレイヤーを尊重しており、クリエイティブであり、プレイヤーは開発者たちが自分たちと同じくらいそのゲームを愛しているとわかっている
- 今後の開発の方向性がフォーラム等で示されており、プレイヤーはお金を払えばその方向性でゲームが発展し、長く続いてくれるとわかっている
- プレイヤーが開発・運営チームが好きで、尚且つプレイヤーが開発・運営チームからの愛を感じられるもの
「4X」と呼ばれるジャンルがある。
・explore (探検)
・expand (拡張)
・exploit (搾取)
・exterminate (皆殺し)
我々は「搾取」と「皆殺し」だけに集中する傾向が強すぎる。「探検」と「拡張」にもっと焦点を当てよう。
Ethical Free-to-Play Game Design (And Why it Matters) – Gamasutra
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